「デフレ脳では資産が減ります」2025年、賢い人の住宅ローン新戦略
トランプ前大統領が大統領に復帰する2025年は、様々な変化が予想されます。その中で、住宅ローン市場はどのような方向に向かうのでしょうか。2025年の見通しと個人がとれる対策について、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を提供するMFSの取締役CMOで住宅ローンアナリストの塩澤崇氏にうかがいました。 【図版】銀行別/2024年12月時点の住宅ローン金利一覧
■メガバンクVSネット銀行、ローン選択の基準は"金利か団信か" ――日銀の利上げ後、足元の住宅ローン金利は銀行間で競争が激化しています。2025年の住宅ローンの金利競争はどのような状況が予想されますか? 2024年は3月にゼロ金利の解除、そして7月に利上げが行われて、国内でも金利のある世界が復活しました。その結果、低コストの預金を集められ、その資金を住宅ローンの貸出に充てられるメガバンクが資金調達面から優位になりつつあります。一方で、2024年は三菱UFJ銀行の住宅ローン残高の減少が明らかになりました。これは同行にとっても大きなショックと考えられます。 同行はじめメガバンク勢は、資金調達面でのアドバンテージを活かし、これまでネット銀行に奪われ続けたシェアを取り返すため、金利競争や積極的な営業などを仕掛けると予想されます。 ――それでは2025年の住宅ローン市場は完全にメガバンク優位となるのでしょうか? 一方的にメガバンクが有利になることはない、と考えられます。確かにネット銀行は資金調達コストの面でメガバンクに及びませんが、低コストオペレーションなどの強みは変わりません。 またネット銀行の強みは住宅ローンの顧客が若年層中心となっている点にあります。住宅ローンユーザーの年代別分布を例えるなら、発展途上国のような富士山型のイメージです。 このため平均年齢が若く、住宅ローンを組む際に加入する団体信用生命保険(団信)の保険料が安い点が強みであり、団信の保障を充実化して、住宅ローン+団信のトータルセットで差別化をより強めるようになるでしょう※。 ※住宅ローン金利はメガバンクより高いものの、団信込みの総合的なサービス及び支払額では有利にできる等 2025年もメガバンクとネット銀行の激しい競争は続くと予想されます。金利のメガバンク、団信のネット銀行という差別化になりそうです。 ――メガバンクも同様の戦略をとる可能性はありませんか? 可能性はゼロではありませんが、難しいのではないでしょうか。メガバンクの住宅ローンの顧客は年代が高い人も多いため、例えて言うなら釣鐘型、つまり先進国のような年代別分布です。平均年齢が高いため、団信の保険料はどうしても高くなってしまいます。メガバンクとしては団信のサービス拡充よりも、金利面での訴求をしたほうが効率的でしょう。 ――利上げ後も競争力維持のため、住宅ローン金利を上げずに維持する銀行も現れる可能性はありますか? 金利を引き上げるシナリオが現実的ではあるものの、引き上げ幅を小さく留める可能性もゼロではないと思います。メガバンクとネット銀行で、住宅ローンを巡る激しい競争が続いています。金利のある世界となり、メガバンクは安く資金が調達できるメリットが生じており、それを住宅ローンの残高回復という経営課題の解決に繋げなければなりません。ゆえに、金利引き上げを我慢して、新規ユーザー獲得に注力することも考えられます。 一方、ネット銀行のメインビジネスは住宅ローンであり、ここで競争力を失うことは絶対に避けたいはずです。2025年に利上げがあっても、新規集客を強化するため、戦略的に住宅ローン金利を据え置く、もしくは金利引き上げ幅を小さく留める銀行があっても不思議ではありません。