政界を揺るがした捜査のきっかけは、1人の「教授」の執念だった 自民党の派閥裏金事件 「政治とカネ」告発し続ける原点に特攻隊員の悲劇
そこまでして告発を続ける原点には、親族が体験した「戦争の記憶」があるという。教授の叔父(父の弟)は第二次世界大戦中に特攻隊員に志願。出撃したが、機体の不具合か何かの理由で不時着し、生還した。叔父は、隊内で悲惨な事例をたびたび目撃していた。 たとえば、出撃した隊員が怖くなり、帰還した際に「機体に不具合があった」と整備兵に告げると、逆上した整備兵が隊員を日本刀で斬り殺した上、自ら特攻機に乗り込んで出撃。戦死した。そんな話を兄である上脇さんの父に語っていたという。 そうした話は上脇さんが成人し、父と酒を酌み交わすようになってから知った。二度と戦争を起こさない国にするにはどうすれば良いか。政権をしっかり監視し、暴走を防がなくてはいけない。それには、議会制民主主義を実現し、政策選挙で選ばれる議員を増やし「国会に緊張感を与えなくてはいけない」。 政治とカネを巡る告発はその一環だ。「汚職や不正を働く議員が次の選挙で当選することがないような仕組みがなくてはいけない。その仕組みが軌道に乗るまでの辛抱だ」。自分にそう言い聞かせ、「疑惑」のタネを探し続ける。