なぜ私たちは対立するのか?分断を解決するカギは「新しい哲学」にある
「人間は万物の霊長」ではない
── 分断を促進するSNSの誹謗中傷が減りません。増えているようです。 澤田:コミュニケーションはかつてより、すごく便利になっています。1990年頃、うちの幹部の人たちは、「未来になっても一人1台コンピューターを持つ時代は来ない」なんて言っていました。ところが、今では一人1台どころか数台持つようになっている。 データを処理する意味では便利になっていっていますが、コミュニケーションそれ自体はプア(poor)になっている。 NTTではリッチコミュニケーションをもっと突き詰めるべきだと考えています。それで環世界(注・すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きていて、それを主体として行動している )の議論になっています。 人間が知り得ていない知覚世界の中で考える、赤外線でものが見える世界があるとか、そうした環世界がある。そして、環世界の技術を人間が活用できれば人間が知覚する世界はさらに拡張できる。 でも、拡張したからと言って「人間は万物の霊長」ではなく、ちゃんと利他の気持ちを持つ。また、自然というものを理解した文化的な思想を両立させていく。これが大事なポイントだと思っています。
野地秩嘉