経済3団体の新年祝賀会 企業トップら「賃上げ極めて前向きに」
経団連など経済3団体は7日、新年祝賀会を東京都内で開いた。集まった企業トップからは、日本経済の成長のカギを握る賃上げの定着について「極めて前向きに考えていく」などと積極的な発言が目立った。一方、トランプ次期米大統領の動向を注視する声も聞かれた。 【図解・写真】「100年に1度の再開発」東京の街はこんなに変わる 「私の思いとしては、賃上げを継続していく意思も含め、賃上げ率5%超を目指したい」。三井不動産の植田俊社長は、祝賀会後に会場のホテルで報道陣の取材に応じ、2023年から3年連続で5%以上の賃上げを実施する意向を明らかにした。実現すれば3年間で計20%超の賃上げ率となる。植田氏は「業績を上げて社員への還元を継続したい」と一過性の賃上げにしない考えを強調した。 2025年の日本経済を占う上で重要になるのが賃上げの定着だ。 昨年の春闘では大手の賃上げ率が平均5・58%(経団連集計)と、33年ぶりに5%を超える歴史的な高水準となった。しかし、物価高に追いつかず、昨年半ばまで物価変動の影響を差し引いた実質賃金は2年以上マイナスが続いた。一時プラスに転じたが、昨年10月まで3カ月連続でマイナスとなっている。人々が手取り増を実感して、長く続いたデフレから本格的に脱却するには、25年も力強い賃上げが不可欠となる。 こうした中、企業トップからは昨年並みの力強い賃上げを検討する発言が相次いだ。大和証券グループ本社の荻野明彦社長は5%以上の賃上げ実現を目指すほか、「新入社員の給与は現行の29万円から30万円に引き上げる方向で検討したい」と表明した。出光興産の木藤俊一社長は「働きがいを感じる会社にするのが経営側の責任。思い切った賃上げや働き方改革などが非常に重要だ」と語った。 持続的な賃上げには原資も必要となる。「ガスト」や「バーミヤン」などを全国展開するすかいらーくホールディングス(HD)の谷真会長は「日本の賃金と、モノやサービスの価格は海外と比べて低水準だ」と指摘した上で、「景気浮揚に重要なのは賃上げと値上げをセットで5年間は続けていくことだ。その間に、日本は本当の経済力を蓄えなければならない」と述べた。 祝賀会後の記者会見で経団連の十倉雅和会長は、中小企業や非正規雇用の賃上げが重要になるとして「価格転嫁を進めないといけない」と指摘。定期昇給に加え、全従業員の賃金を底上げするベースアップ(ベア)の必要性を訴えた。 海外に目を転じると、トランプ氏の米大統領就任が今月20日に迫り、経済政策の動向に注目が集まっている。 三菱商事の中西勝也社長は「米国主導の変化が起きる。政策の振れ幅が大きいと見込まれるため、スピード感を見極め、変化に対応する必要がある」と身構える。関税強化などで米中対立の激化が懸念されることについては「2国間の問題ではなく、(影響が)世界に拡大しうる」と警戒感をにじませた。 トランプ氏は大統領選勝利後、カナダやメキシコ、中国への関税強化を表明している。 ANAHDの芝田浩二社長は「モノの流れに大きく影響するので、非常に気になる」と述べ、中国経由で米国に渡る貨物や、自動車メーカーの投資が進むメキシコへの影響を心配した。 米国以外にも多くの国で政権交代が起きており、25年は「大変化の年」(NTTの澤田純会長)となる見通しで、経営陣は難しいかじ取りを迫られそうだ。【浅川大樹、加藤結花、佐久間一輝、安藤龍朗】