古民家を支えてきた「古木」に再び命を ソフトバンク営業マンから転進、「1+1=2」ではない木造建築の世界へ
◆古民家から出る古木を、再び資材に
――古材の事業を始めたきっかけは? 建築業界に入り、古い民家がどんどん壊され、古木が廃棄されているのを目の当たりにして、もったいないと思っていました。 「使い道がない家なら壊して駐車場にしてしまえ」と古民家が壊されていくのを見て、また、「立て替えたほうが安い」と壊してしまうことを促す業界には疑問を持っていました。 どうにかしたいと考えたんです。 もともと環境問題に関心があり、廃棄される古材を活用するため、2006年に古木の買い取り販売という新規事業を始めました。 業界では、古民家から出る良質な木材を「古材」と言っていましたが、山翠舎では思い入れのある木材のことを「古木(こぼく)」と名付けて、愛着をもたせるようにしました。 山翠舎の定義する古木は、戦前に建てられた築80年以上の古民家の解体から発生した柱、梁、桁、板の木材のことです。 加えて、社内の古木スペシャリストが、虫食いや水漏れのない状態を確認し、保管状態が良いもの。 さらに、古民家の建てられた年代や場所、木材など入手ルーツが明確でトレーサビリティが確保されているものを定義しています。 こうした「古木」を使った設計・施行という独自性により、コンペで勝ち抜ける可能性も高まりました。 そして、サステナブルを訴求できる古木は、デベロッパーに支持されるようになってきました。 スクラップアンドビルドの時代ではなくなっているので。 最近では、パタゴニア軽井沢店の施工や、業務提携の丹青社も大阪のお店で受注しています。
■プロフィール
株式会社 山翠舎 山上 浩明 氏 1977年長野県長野市生まれ。東京理科大学卒業後、2000年にソフトバンクに営業として入社。ネットワーク機器の販売で社長賞を受賞。2006年に(株)山翠舎に入社し、従来の「工務店」としての枠を飛び越え、空き家古民家の社会問題解消を目指し、「古民家を活用した事業」に特化したビジネスモデルへシフト。2012年に代表取締役社長に就任。2018年「スタートアップアントレプレナー表彰プログラム"EOY JapanStartup Award 2018"(主催:EY Japan)」の甲信越代表に選出。2019年「FSC認証」において、古木で世界初の認証を取得。2020年「古民家・古木サーキュラー・エコノミー」でグッドデザイン賞(審査委員 井上裕太氏の選んだ一品)・ウッドデザイン賞(奨励賞【審査委員長賞】)受賞。2021年 長野県の「信州SDGsアワード2021」 受賞。2021年 事業構想大学院大学にて事業構想修士を取得。2023-2024年 欧州最大級のインテリア・デザイン見本市「メゾン・エ・オブジェ」2年連続出展。