「胃がん」治療の新たな希望! “腸内細菌の移植”で治療効果アップか 国内初の臨床試験
国立がん研究センターらの研究グループは、健康な人の腸内細菌を胃がんなどの患者に移植して腸内環境を改善させることで、がんの治療薬の効果を高められるかの臨床試験を始めました。こうした取り組みは国内初となります。この内容について岡本医師に伺いました。 【イラスト解説】「胃がん」になりやすい人の特徴 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
研究グループが発表した内容とは?
編集部: 国立がん研究センターらの研究グループが発表した内容を教えてください。 岡本先生: 国立がん研究センターと順天堂大学、そしてバイオスタートアップのメタジェンセラピューティクス社が共同で臨床試験を開始しました。臨床試験は「胃がん・食道がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬と腸内細菌叢移植併用療法」に関するものです。 腸の中には、いわゆる善玉菌や悪玉菌などの様々な菌がいます。そして、健康な人の腸と病気の人の腸ではそこにいる菌の種類、比率が異なるということがわかっています。健康な人の腸にいる菌をその種類、比率そのままの塊(腸内細菌叢)で内視鏡を用いて疾患を持つ患者の腸内に注入することで、バランスのとれた腸内細菌叢を構築する医療技術を「腸内細菌叢移植(糞便移植)」と言います。現在、悪性黒色腫患者で免疫チェックポイント阻害剤が効かない人に対して、この技術を使うことで治療の奏効率を改善させることが示唆されています。そのため、そのほかの様々な悪性腫瘍に対する効果についても検討されはじめています。 今回の臨床試験は、国内で初めて消化器がん患者を対象にした腸内細菌叢移植の臨床試験となります。食道がんや胃がんで免疫チェックポイント阻害薬による治療効果が得られない患者にとって、新たな治療選択肢にできるかを検討していくものです。 今回の臨床試験をについて、研究グループは「腸内細菌叢移植併用療法は、がん治療において注目が高まっている新たな方法です。このたび諸外国に遅れを取ることなく、日本初となる消化器がん患者を対象とした腸内細菌移植療法の臨床試験を開始できたこと、大変嬉しく思います。本試験を通じて、免疫チェックポイント阻害薬の効果を高めることで、より有効な治療選択肢を提供できるよう、尽力して参ります」とコメントしています。