「胃がん」治療の新たな希望! “腸内細菌の移植”で治療効果アップか 国内初の臨床試験
研究の背景とは?
編集部: 今回の臨床試験は、消化器がん患者を対象とした国内初の腸内細菌叢移植の臨床試験となりますが、試験に至った背景とはどのようなものがあるのでしょうか? 岡本先生: 日本において、食道がんは年間約2.5万人、胃がんについては日本で3番目に多いと報告されています。また、5年生存率については胃がんで65%程度、食道がんで40~45%程度と言われています。 医学の進歩により、使用できる治療手段が広がっているものの、薬などの治療効果が得られない場合もあり、新たな治療の開発が必要となっています。一方で、腸内細菌叢の乱れは潰瘍性大腸炎や糖尿病、アレルギー疾患などに関連すると言われています。現在、腸内細菌叢移植の効果が証明されているのは一部の腸炎です。しかし、ほかの疾患、潰瘍性大腸炎などの難病などにおいても研究がされており、効果があるのではないかと報告され始めています。がん領域では先述した悪性黒色腫の患者でも治療の奏功性が改善されるのではと示唆されている研究も出てきています。 そのため、胃がんや食道がんなどにおいても、腸内細菌叢移植を併用することによって免疫チェックポイント阻害薬の奏効割合を安全に向上できないのかと考えられ、今回の研究が実施されることになりました。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: 国立がん研究センターらの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。 岡本先生: 切除や化学放射線療法などで根治を目指せない胃がん・食道がんの場合、抗がん剤などの薬物を使用した化学療法をおこないます。しかし、人によって薬の効果がなかったり、いずれ効かなくなったりしてきます。今回の研究は、腸内細菌叢移植をおこなうことで薬が効かない人も効かなくようにできないかを調べるためのものであり、安全性と有効性が証明できれば患者さんの選択肢を増やすことができるかもしれません。時間はかかるかもしれませんが、これらが証明できれば化学療法が効きにくいほかの腫瘍などでも応用できないかと研究が進んでいく可能性はあると思います。