17日着工 ── 品川―名古屋間2027年開業目指すリニア中央新幹線計画とは(鉄道ライター・伊原薫)
かつて、子供向け雑誌などで21世紀の乗り物として紹介されていた「夢の乗り物・リニアモーターカー」が、いよいよ現実のものとして動き始めます。JR東海は「リニア中央新幹線」の着工式(安全祈願式)を17日に行い、2027年に品川―名古屋間の開業を。また、名古屋―新大阪間は2045年の開業を目指しています。新幹線に続く超高速鉄道として開発が始まってからすでに半世紀以上が経ちますが、そもそも「リニア中央新幹線計画」とは何なのか、簡単におさらいしてみましょう。
来年には駅やトンネルなど本工事もスタート
リニア中央新幹線は、品川―名古屋―新大阪を結ぶ路線として計画されています。その名の通りリニアモーターカー方式が採用され、まずは品川―名古屋間の約286キロメートルについて、ルート決定や地元への説明会が行われてきました。 これまで工事着工は2015年の予定とされてきましたが、10月17日には国から建設工事の認可が下り、また説明会も順調に進んだことから、年内に着工できることになりました。明日は東京と名古屋で安全祈願式が行われ、まずはリニア新幹線の駅が建設されるJR品川駅やJR名古屋駅の周辺で、工事を進めるための用地整備や店舗・施設の移転作業など、本工事へ向けた準備作業が進められます。 来年には、駅やトンネルなど本工事もスタートし、日本の鉄道にとって大きな事業がいよいよ現実のものとなります。
リニア中央新幹線計画のおさらい
ところで、リニア中央新幹線計画とはそもそもどんなものなのか、簡単におさらいしてみましょう。 日本でリニアモーターカーの開発が始まったのは、1962年(昭和37年)のこと。なんと東海道新幹線が開業する2年前に、早くもスタートしていたのです。その後、実験線が宮崎県に建設され、1977年には世界最高速度となる時速517キロを記録。1997年からは実験の場を山梨に移し、走行性能とともに長編成化や環境に与える影響など、大量輸送システムとして必要になる様々な実験が繰り返されています。現在では実験線の長さは42.8キロメートルとなり、車両も最大12両編成・約700人が乗車できる「営業車」が使われています。 一方、このリニアを用いて東海道新幹線のバイパス線を建設する計画も進められました。日本の大動脈である東海道新幹線の老朽化や、東海地震などの発生時に備え、これに対応できる新路線が必要とされたためです。当初は、東海道新幹線に沿う形でリニア新幹線を建設する案や、現在のリニア中央新幹線のルートを従来の新幹線方式で建設する案も浮上しましたが、次第に現在の計画へまとめられていきました。 リニア中央新幹線が通るルートについては「東京・名古屋・大阪を高速に結ぶ」という目的のもと、この3都市をほぼ直線で結ぶ形で計画が進められました。最大のネックはこのルートの中央にある南アルプスをどう越えるか。南アルプスの地下を長大トンネルで越えるCルートと、北側へ迂回して伊那谷を通るBルート、同じく迂回し、さらに大回りして木曽谷を通るAルートの計3案が検討されました。 最終的には、距離が最も短く建設費も抑えられるCルートが「技術的にも建設は可能」とされ、この案に決定。2013年9月にはルートの概要と共に、設置される駅の位置なども発表されました。 これによると、リニア新駅は各都県に1か所で、東京都・品川駅と愛知県・名古屋駅のほか、神奈川県は相模原市のJR・京王相模原駅付近、山梨県は甲府市南部の大津町付近、長野県は飯田市のJR伊那上郷駅近く、岐阜県は中津川市のJR美乃坂本駅付近に建設されます。 リニア中央新幹線では、世界でも初めてとなる超電導リニア方式を採用。最高速度は時速505キロで、品川~名古屋を約40分、品川~大阪を約67分で結ぶ計画です。新幹線「のぞみ」が最速それぞれ約90分、約145分ですから、いずれも半分以下となります。もはや出張や旅行というより「ちょっとそこまで打合せ・お買い物に」といった感覚でしょうか。