2025年の「AI」はこうなる さらに進化するAI世界の展望 長谷佳明
2024年は、先進的な企業を中心に「生成AI」が試用から実用化に進んだ年であった。ただ、「生成AIの普及に向けた4つの壁 『幻滅期』を乗り越えるための処方箋」(24年9月23日掲載)でも指摘したように、足元では課題も露呈している。技術の実用化は時に、開発以上に多くの労力を要する場合もあり、AIもそれは変わらない。一方で、最先端のAI研究や萌芽事例からは、新たなトレンドが見え始めている。今回は、2025年のAIの方向性を考えるうえで、重要と思われる事項を紹介したい。 ◇データの次元が拡張していく 画像生成に関する進展は目覚ましく、技術開発はものすごいスピードで続いている。22年の「ミッドジャーニー」をはじめとする画像生成AIは、テキスト入力によって本物の写真と見間違うような画像や、さまざまな画風のイラストなどを作成でき、コンテンツ業界に衝撃を与えた。23年には、ニューヨークのスタートアップRunwayの「Gen-3 Alpha」のように、写真から動画を生み出す技術が早くも登場した。そして24年には、中国のTRIPO AIをはじめとしたスタートアップが、製造業の設計でも活用するCADソフトウエア(Computer-Aided Design Software)用の3Dモデルの生成を2D画像から可能にすることを示した。 AIは、テキストという一次元の表現を、二次元の画像に変換し、さらには、動画、そして立体構造である三次元にするなど、データの次元を次々に拡張し続けている。 ◇自然界の「法則」をAIの中に 2025年は、動画生成技術と三次元データの生成技術が融合して、VR(仮想現実)のように動画の中に人間が入り込むような感覚を味わうことができる、新たな時代を迎えるだろう。写真や画像1枚が3D空間になり、その中で人間が“探索”することが可能になるのである。 この実現に必要なものが「法則」である。たとえば、地面と思わしき方向には重力があり、歩く際に接地するなど自然界の法則がAIに備わっている必要がある。