2024年は飛躍に向けた土壌作りの年、税制改正でアセットの広がりに期待【デジタル証券フォーラム2024 イベントレポート 前編】
現物とJ-REITの両方の良さをデザイン
続いて「不動産STで始まるデジタル・アセットマネジメント」と題して、ケネディクス 執行役員 デジタル・セキュリタイゼーション部長 中尾彰宏氏が講演した。3.4兆円という国内最大級の運用資産規模を持つケネディクスは、2021年8月に日本初の不動産STを手がけて以来、不動産STのパイオニアとして、これまで12案件、約1400億円もの不動産をST化してきた。 「ケネディクスのコーポレートミッションは『不動産の限りなき可能性を切り拓く』だ。不動産STはまさにこれを体現するもので、日々新たな挑戦を続けている」と中尾氏は語る。 現物不動産は、2001年のJ-REITの登場で金融商品化が進み、投資インフラが整備されてきた。不動産STは、そのJ-REITと多くの共通点を持つが、次の点で不動産STと異なってくる。J-REITの場合、投資不動産がポートフォリオ化されており、不動産を選定するのも資産運用会社となる。また、金融商品として市場の影響を受け、価格変動が大きいことも懸念点だ。一方、不動産STは、投資対象は個別の不動産であり、選定も投資家自身が行う。さらには、価格形成も安定的だ。 「つまり、不動産STは現物不動産のような分かりやすさと安定性を持ち、J-REITのような利便性と簡便性のある不動産投資商品としてデザインすることが可能だ」
賃貸戸建を裏付けとしたSTも展開
2024年7月には、賃貸戸建「Kolet(コレット)」を裏付けとした不動産STを発行した。これはオフィスや物流などを中心に発展してきたJ-REITにはない日本初の試みだ。 「個人投資家にとって身近な戸建住宅を、STを活用して商品化することに成功した。不動産STがJ-REITとは異なる、新たな不動産投資対象の領域を改革したものとして、エポックメイキングな事例と言えるだろう」 また、STのセカンダリー市場である大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)では、ケネディクスが発行した神戸元町のホテルと名古屋栄のオフィスの2銘柄が取り扱いされている。売買出来高も増えており、少しずつ活況を呈し始めている状況だ。 「STセカンダリー市場が可視化され、証券会社を跨いだST売買が促進される効果は大きい。プライマリーで買えなかったSTをセカンダリーで買うといった利便性がさらに高まっていくことに期待したい」 さらに2025年2月には、顧客投資家との接点として重要な役割を果たす、「顧客ポータルアプリ」をリリースする予定だ。投資対象不動産の情報提供に加えて、ブロックチェーンプラットフォームと連携した資産管理機能など、様々なサービスを提供する。登録者数5万人を目指すという。 「即時性のある不動産データを通じて個人投資家のニーズを把握し、それに合わせた不動産投資運用サービスを提供していきたい」 2025年、ケネディクスは、1000億円以上の不動産をST化していく方針だ。2030年までに2.5兆円の不動産ST市場を実現するべく、最大限のコミットを続けていくという。 「来年から不動産セキュリティトークンの第二幕が始まる。ケネディクスは不動産STOの推進に加えて、デジタルセットマネジメントを本格化させていく」と、中尾氏は意気込みを語った。 ◇◇◇ 後編では、「不動産STの発展と未来への展望」「2025年、アセットの広がりでST市場はどう変わる?」と題して行われた2つのパネルディスカッションと、クロージングセッション「新進気鋭のスタートアップが語る、ST市場の変革と成長」の模様をお伝えする。 |テキスト:橋本史郎|編集:CoinDesk JAPAN編集部|撮影:多田圭佑
CoinDesk Japan 編集部