2017年為替予想 USD/JPYは113で据え置き 不安材料はドル高と原油価格
上記の楽観・悲観シナリオはそれぞれ実現する可能性が高いですが、最重要ポイントは米国経済および連邦準備制度(FED)の動向です。弊社米国担当は米経済の実質国内総生産(GDP)成長率を2017年+2.5%、2018年+2.4%と潜在成長率(労働力や設備などをフル活用した時に実現される成長率)を上回る伸びを予想。失業率が5%を下回るような、完全雇用に近い状態で更なる景気刺激策が発動されれば、潜在成長率の達成は容易とみられます。新政権の舵取りは不透明感が強いものの、FEDが過度な引き締めを断行するようなことがなければ、米経済は成長加速が見込まれ、世界経済を牽引することでしょう。こうしたファンダメンタルズ改善を伴っていれば「強い米国、強いUSD」が正当化されるはずです。
このように楽観的な展開となった場合、USD/JPYは120突破はおろか125を超えても不思議ではありません。筆者はUSD/JPYが125-130レベルに到達する可能性を現時点で10%程度と小さく見積もっているものの、イエレン議長が「高圧経済」を目指すと明確に打ち出せば、その確率は上昇すると考えています。 一般的に完全雇用下における財政刺激は、中銀にとって許容できないレベルのインフレ圧力を生じさせ得るため、強い金融引締めを意識させますが、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長が「高圧経済」を目指すとのシグナルを発すれば、景気引き締めの優先順位が劣後することを投資家が織り込むので、リスクテイク志向が強まります。そうした下では、世界的な株価上昇を横目に先進国マイナス金利通貨が全面安となる一方、資源・新興国通貨が堅調に推移するのが基本。日米金利差はさほど拡大せずとも、USD/JPYは鋭く上昇すると予想されます。なお高圧経済とは、その実現が金融危機後の長期停滞からの脱出手段として有力であるとの考えに基づいており、最近になってFED内部で真剣に議論されているとみられるものです。端的に言うと、景気過熱気味になっても緩和的な金融政策を維持することで、アクセルを踏み続けるという政策です。