さりげなく…パートナーのななめ後ろに半歩の距離に、私が立ち続ける理由
さりげなく
介護の現場で出会った人から「幸せになる方法」を教わった、と語る介護福祉士でイラストレーターの高橋恵子さん。今度はあなたに、イラストと言葉でメッセージを届けます。 【本編を読む】次のイラストは 「きもが冷えた瞬間」
認知症がある人のなかには、 足元に注意を向けづらい人もいます。 目の前の段差を見逃して、転びそうになったり、 水たまりに足を踏み入れて、靴を汚してしまったり。 普段私たちは何げなく歩いていますが、 舗装された道路でさえ、平坦(へいたん)ではありません。 車椅子を使っていたり、歩行になんらかの障害がある人と歩いたりすると、 道のあらゆるところに傾斜や隆起が存在することに気付くでしょう。 そんなときに知っておくと安心な、 歩行介助のポイントがあります。 「転倒するかもしれない人の、 ななめ後ろに半歩距離をとって、 さりげなく歩く」 それは私が訪問介護ヘルパーになった当時、一番はじめに教えられた、 歩行介助の基本のきです。 身体状況が変わってくると、障害物がなくても、 突然ひざが崩れて転倒しそうになる、ということもあるわけです。 その基本のおかげさまで、 私は半歩前で歩く人の転倒を、今までなんど回避できたかわかりません。 ちなみに介助者はご本人の右側・左側、そのどちらの後ろについたらいいかですが、 身体状況や環境によっても変わります。 けれど「ご本人の体が傾きやすい側の半歩後ろ」と覚えておくと、安全の目安になります。 そしてなにより、その立ち位置をつくる時に大切なのが、 「さりげなく」ということです。 介助されている・しているという心の距離感よりも、 気持ちのいい間合いをつくること。 それが、共に歩く信頼につながるのかもしれません。 《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
高橋恵子