365日「位置情報ON」恐怖の職場 社員を24時間監視し、トイレに行っただけで「解雇」
●勤務時間外の位置情報取得は「プライバシー侵害」
──スマホで常に位置情報を把握し、いざという時に緊急業務に向かわせるという運用についてはどうでしょうか。 スマホ等のGPS機能による労務管理は、すでに勤怠管理等で用いられています。 労働者には職務専念義務があるため、かかる労務管理も、目的が正当であり、その目的に必要な情報のみを取得するなどプライバシーに配慮した運用であれば、法的には問題ないとは言えます(労働者の反発を招くなど事実上のデメリットにも配慮する必要はあります)。 ただし、会社の指揮命令権は勤務時間外には及ばないため、スマホのGPS機能を「24時間365日常時ON」にするという運用は、プライバシー侵害等として違法であり、不法行為(民法709条)を構成する可能性が高いと言わざるを得ません。 実際に、労務提供義務のない時間帯に会社支給の携帯電話をナビシステムに接続させて居場所確認をしていたことを不法行為として、労働者の会社に対する慰謝料請求を一部認容した裁判例があります(東京地裁平成24年5月31日判決)。 この事案でも、会社側は緊急連絡が目的との主張をしましたが、「従業員に労務提供義務がない時間帯、期間において本件ナビシステムを利用して原告の居場所確認をすることは、特段の必要性のない限り、許されない」と判示されました。 今回のケースでも勤務時間外の位置情報の把握は違法となると考えます。 【取材協力弁護士】 正込 健一朗(しょうごもり・けんいちろう)弁護士 弁護士・社会保険労務士として、主に使用者側の労務問題に取り組んでいる。紛争案件だけでなく、セミナー・研修や社内規定整備・制度構築さらには企業文化醸成による予防法務にも力を入れている。経営法曹会議会員。 事務所名:正込法律事務所 事務所URL:https://shogomori.com/