365日「位置情報ON」恐怖の職場 社員を24時間監視し、トイレに行っただけで「解雇」
取引先で仕事中にお腹が痛くなった同僚が、現場を一時的に離れてトイレに行ったことを理由に解雇された──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられた。 自主退職→会社都合退職にできます 相談者の会社では、定年後に継続雇用された同僚を含め、全社員に対して、支給スマホの位置情報を休日含め「24時間365日常時ON」にしておくよう指示し、休日の緊急業務を近くにいる社員に向かわせるという運用をしているという。 同僚は、その位置情報で現場を離れたことが会社に知られたようで、相談者や他の社員が、トイレに行くための離脱だったことや、その日の業務自体は問題なく終えており、取引先への悪影響も一切なかったと説明したものの、相手にされず同僚は解雇されてしまった。 相談者としては、トイレに行ったことを理由に解雇したことには疑問がある上、会社がずっと社員の位置情報を管理していることにも不快感があるようだ。会社側の対応は問題ないのだろうか。労務問題に詳しい正込健一朗弁護士に聞いた。
●トイレ離脱で解雇「無効の可能性かなり高い」
──今回のケースにおける解雇は問題ないのでしょうか。 前提として、本件解雇が、当該会社の就業規則に定める解雇事由に該当するかどうかをまず確認する必要があります。 そのうえで、就業規則の規定に照らして解雇事由に該当する場合でも、解雇が有効と認められるためには、(1)客観的合理的理由と(2)社会通念上の相当性が必要となります(労働契約法16条)。 相談内容からは、職場を頻繁に離れていたということではないようですので、1回きりの事案として検討します。 今回のケースでは、トイレに行くための一時的な職場離脱であり、業務に支障も生じていないとのことですので、(1)客観的合理的理由が認められるとは考えにくく、また、(2)単発の職場離脱で即解雇というのは社会通念上の相当性も認められません。 なお、解雇された方は定年後再雇用とのことですので、再雇用の形態が、たとえば1年ごとの更新などの、期間の定めのある労働契約であった場合には、解雇は「やむを得ない事由」がなければできません(労働契約法17条1項)。 1回限りのトイレに行くための離脱が「やむを得ない事由」に当たることは通常はあり得ないと思われますので、この場合でも、本件解雇は無効と考えられます。