「膨大なアート」を受け継いだ二人が語る、コレクションとその未来
日本のアートシーンの可能性
福武:どの分野でも、関わる年齢層が下がっていくのは大事なことです。支える人たちの若返りにあわせて、アーティストが世に出る年齢もさらに下がっていくといいですよね。スポーツだと10代で世界一になることも普通です。陸上の100m競技で誰かが10秒切ると、そこから9秒台が次々に出始めるドミノ現象のように、10代20代の若いアーティストが続々と世界のトップを張る世界が出てくると面白そうです。 もちろん欧米の大御所もいいのですが、BASNは特に、杉本博司さんや安藤忠雄さんのようにずっと関わっていただいているアーティストがいることも価値になっているので、新しい取り組みでは、長く共創していけそうな日本やアジアの同年代のアーティストに注目しています。 田口:実は私は数年前に初めて直島を訪れたのですが、海外で「日本に行ったことのある」という人と話すと、皆さん「直島!」と言うので、その場所からそういう動きが起こっていくのは楽しみですね。 福武:日本のアートをどうして行こうと言うほどの気概はないのですが、僕自身は、日本のアートシーンを楽観的に見ています。美和さんが言うように現代アートも盛り上がってきていますし、揶揄されることもありますが、“世界一美術館が好きな国民”ですし、地域芸術祭がこれほど同時多発的に起きている国もなかなかありません。ヴェニスビエンナーレのようなクオリティはないかもしれないけれど、これも独自の進化、発展系だなと。 田口:そうですよね、地域のお祭りのような。だとすると、それを世界に接続することが新たな可能性を広げるかもしれないですね。 昨年、ブラジル・サンパウロのビエンナーレに行くことがあって、それとあわせてベロオリゾンテという街まで足を伸ばしてイニョンチンという野外美術館に行ってきたんです。そこは直島にも通じるようなスポットで、東京ドーム30個ほどの広さの植物園に、いくつものパヴィリオンがあって。敷地内をカートで回るのですが、しっかりと見て回ると1週間かかるのではないかと。 ブラジルのアーティストもしっかりとフォーカスされているし、日本人だと草間彌生さんの作品がフィーチャーされています。来年にはホテルが敷地内にオープンするようで、泊まれるようになったら再訪したいと思っています。