桜の開花には「冬の寒さ」も必要 “桜の開花日”でわかる「景気の行方」【解説:エコノミスト・宅森昭吉氏】
桜は暖かい日が続くと咲くイメージがありますが、実は開花には「冬の寒さ」も欠かせません。5℃前後に一定期間さらされることで、花芽が休眠から目覚め(=休眠打破)、開花に向けて成長を再開するからです。2024年は季節外れの暑さが続きましたが、年末にかけての平均気温は全国的に「冬らしい寒さ」となるようです。休眠打破の環境が整いつつある今、約40年にわたり国内外の景気分析をしてきたエコノミスト・宅森昭吉氏が、「東京の桜の開花日」と「景気局面」の関係を紹介します。
東京の桜開花日が「3月20日以前」だと、景気は拡張局面
1953年から実施されている気象庁の生物観測調査によると、東京の桜の開花日が平年(3月24日)より4日早い「3月20日」以前になった年は、2024年までで12回ある。このうち、コロナ禍でお花見が自粛された2020年を除く11回は、すべて景気の拡張局面に当たる。 早く春が来ると春物衣料商戦が早まるほか、お花見などで外出することが多くなることで、個人消費の底上げが期待できる。お花見の宴会は人々の気分を盛り上げる。厳しい冬の期間が過ぎ、桜の花を愛でて明るい気分になる人は多いだろう。 ただし、開花が遅いからといって景気がよくないとは限らない。1953年に調査を開始して以来、最も遅い開花日となったのは1984年の「4月11日」だったが、85年6月の景気の山まで景気拡張局面が続いた。
開花日は「2月以降の最高気温累計」である程度予測できる
2023年と2024年の最近2年間では、桜の開花時期が対照的だった。2023年は桜の開花が早く、東京の開花日は史上最速タイの3月14日であった。 東京の開花日は、靖国神社の能楽堂の近くにある標本木に5~6輪の花が咲いた日とされる。 2023年は、予測では3月13日に開花するのではないかといわれ、13日当日は各局の取材クルーが標本木の前に集まった。しかし寒冷前線の通過によって午後から気温が下がり、気象庁観測員の13日の発表は「桜の開花は4輪」と、開花日とみなすにはあと1輪足りなかった。結果として、東京の桜の開花宣言は3月14日にズレ込んだ。一方、2024年の東京の桜の開花は3月29日と、平年より遅くなった。 東京の桜は、2月1日以降の最高気温の合計がおおむね600℃に達すると開花する傾向があるといわれる。開花日が「3月14日」と、調査史上最も早かった2020年・2021年・2023年の最高気温累計は各々598.6℃、611.5℃、593.2℃と、おおむね600℃前後だった。開花日が3月20日となった2022年は、開花日までの最高気温の累計は626.6℃であった。 なお、開花日が3月29日だった2024年は、最高気温の開花日までの累計は769.0℃である。2024年は過去の傾向が当てはまらない年だった。