気候変動で空の旅が危険になっている、乱気流が激増、事故はこれから起こりがちに
飛行時間が延びる
気候変動は、飛行時間の長さにも一部影響を及ぼし始めている。ウィリアムス氏らの研究によると、ジェット気流が激しくなることによって、西回りの航空機が受ける向かい風が強くなっているという。向かい風は飛行の効率を悪くし、到着が遅くなる。 航空産業がこれ以上成長しないと仮定しても、飛行時間は年に2000時間余計にかかるだろうと、ウィリアムス氏らは予測している。そうなれば、排出量も航空会社のコストも増え、さらに旅行者への負担も増える。東向きへのフライトが短くなっても、西向きのフライトが長くなるためだ。
希望の光
これほど航空産業に与える影響が大きいと、気候変動に楽観的な人でも気が滅入りそうだ。ウィリアムス氏自身の見解も、悲観的なように見える。「このまま気候が変動し続ける限り、これらの結果はどれも避けられないでしょう」。多くの専門家が、21世紀には世界中で生活様式の変化が余儀なくされると考えている。 しかし、ウィリアムス氏の言葉にはわずかな朗報と、地球の未来への一筋の希望が含まれている。私たちが、(危険も高まっている)空の旅への依存度を減らせば、温室効果ガスの排出量が減り、人為的な気候変動による最悪の影響を避けるのを助けられるのだ。 2022年には、世界の航空業界から2500人を超える代表者が集まり、2050年までに航空産業による炭素排出量を実質ゼロにするという国際目標を立てた。かなり大胆な目標だが、どんなに小さな進歩でも地球のためになる。 研究者たちは、人間がすでにこの地球にもたらしたダメージのいくつかは元に戻せないと言うが、ある程度の協力と大幅な排出削減によって、人間が今与えている影響を減らし、最悪の事態を回避できるという点でも一致している。 最悪のシナリオを食い止めることは簡単ではないだろう。しかし、世界的な行動によって、今後数十年の地球をより住みやすく、空の旅をよりしやすくできるかもしれない。
文=Erin Blakemore/訳=荒井ハンナ