気候変動で空の旅が危険になっている、乱気流が激増、事故はこれから起こりがちに
物理的な損傷
ほかにも、航空機が直面する脅威がある。2024年6月、オーストリア航空機が雷雨のなかを飛行中に、ひょうに当たってノーズコーン(機首の先端)の大部分を失う事故が起こった。 この先も極端な高温と低温は常態化し、雨の量や激しい嵐の割合も増えると予測されている。米海洋大気局(NOAA)によると、1日に膨大な量が降る集中豪雨も1980年代以降「大幅に」増えているという。地域差も激しく、豪雨に見舞われる土地の割合は拡大している。 激しい雨のなかでも航空機は飛べるが、雨でパイロットの視界が悪くなることがある。また、ひょうの発生する頻度は気候変動でそれほど変化することはないかもしれないが、ひょう自体が大きくなって、被害を拡大させる恐れがある。
滑走路の浸水
空港は、低地の平らな土地や、海または川のそばに作られていることが多い。滑走路には適しているかもしれないが、すでに大規模な冠水被害に見舞われた空港もある。5月には、記録的な大雨のためブラジルのリオ・グランデ・ド・スル州にあるサウガード・フィーリョ国際空港が冠水した。 2021年1月に学術誌「Climate Risk Management」に発表された研究によると、海面より低い位置にある空港は世界で100カ所あり、海面上昇に伴って主要な空港での冠水リスクが2100年までに最大で69倍にもなると予測されている。海面より上にある空港でも、激しい嵐と雨量の増加によって滑走路が冠水する恐れがある。また、川の氾濫も増えると予測されている。
暑すぎて飛びにくい
地表の気温の上昇や熱波は、航空機の離陸にも影響を与える。空気は暖まると膨張して密度が下がり、機体を浮き上がらせる揚力が小さくなる。つまり、離陸するためにより長い滑走路が必要になり、重量も減らす必要が出てくる。 ウィリアムス氏らが、ギリシャの空港での過去60年分の離陸記録を分析したところ、同じ機種でも離陸までに必要な距離は温暖化に伴って年平均でおよそ0.15%ずつ伸びていたことがわかった。 気温の上昇で、滑走路のアスファルトが発する大量の熱も、航空業界に影響を与えている。そのようななかで働く作業員たちは大変な労働を強いられ、命の危険にすらさらされる。機内で働く乗務員も例外ではない。ある航空会社では、熱のせいで炭酸飲料の缶が爆発し、客室乗務員が負傷する事故が増えている。 フライトが遅れれば、航空会社にとって経済的な痛手となる。実際に、冬の悪天候よりも夏の猛暑のほうが遅延の原因になっている。