江原啓之「夫の介護を娘が手伝いたいと言ってきた。一度独立した子どもとは、別々に暮らしたほうが揉め事が少ない」
◆介護は義務ではない 一方、娘の立場から今回のテーマを考えてみます。子ども、とくに独身の娘の場合、「あなたが親をみて当然」という親やきょうだいからの無言の圧を感じる方が多いようです。今回のように老いた親が愚痴っていると、「介護を手伝ってほしい」と言われているように感じ、「何もしない自分は冷たいのではないか」と自らを責めてしまうのだとか。今回の親はそんな圧はかけていないわけですが、仮に無言の圧をかけてきたとしても、子どもはそれを無視していいと、私は思っています。 スピリチュアルな視点からすれば、家族であってもたましいは別。いわば他人と同じです。冷たく聞こえるかもしれませんが、血のつながりがあるからといって、介護が義務というわけではありません。そもそも子育てはボランティア。子育てをしたから老後の面倒をみてもらおうなどという親の発想に、いちいち悩まされる必要はないのです。 とはいえ、時々親の愚痴に付き合うくらいはしてあげるといいでしょう。「愚痴は聞きたくない」という思いもあるでしょうが、本人は愚痴とも思っていない可能性が高いのです。きっと誰かに聞いてほしいだけなのでしょう。それが負担だと伝えると、「もう連絡しなきゃいいんでしょ!」などと親がキレて後味が悪くなる可能性も。親の愚痴は、「うん、うん、そうね」と、適当に相づちを打って聞き流せばいいのです。 映画や小説などでは子どもが献身的に親の介護をする姿が、家族愛の美談として描かれます。「やっぱり家族よね」なんて感動しても、それはフィクション。感情に流されると不幸の滝壺に自ら飛び込むことになりかねません。親も子も、自立と自律を貫くのが幸せぐせです。 (構成=やしまみき)
江原啓之