暗闇のなかで耳を澄まして、音の世界に入り込む。個展『evala 現われる場 消滅する像』をレポート
新たな聴覚体験を創出するプロジェクト『See by Your Ears』を主宰するサウンド・アーティスト、evalaの集大成となる大規模個展『evala 現われる場 消滅する像』が開幕した。2025年3月9日まで、東京・初台にあるNTTインターコミュニケーション・センター [ICC] で開催されている。 【画像】evalaの作品 目で見るだけではなく、「聴くこと」によって新たな知覚体験を届ける8作品が展示されている本展をレポートする。
たった一人で体験するインスタレーションなど、evalaの集大成となる個展
立体音響システムを駆使し、個人としても様々な作品を発表しながら、コラボレーションなど幅広い分野で活躍するevala。 会場となったNTTインターコミュニケーション・センター[ICC](以下、ICC)は、evalaが立ち上げたプロジェクト『See by Your Ears』の原点として位置付けられている2013年の作品『大きな耳をもったキツネ』を発表した場所でもある。 サウンドアートのパイオニアである鈴木昭男と協働し制作された同作品では、鑑賞者はICCの無響室(音の反響がまったくない空間)に入り、「耳から新しい世界を視る」体験ができる。 本個展でも、『大きな耳をもったキツネ』、『Our Muse』をはじめとする無響室での立体音響作品シリーズが展示されている。数分間のあいだ、たった一人きりで密閉された無響室にとどまり、耳を澄ませることで、まるで時空が変容するような音体験を堪能できる繊細な作品だ。体験人数が限られているため、事前予約をしてから訪れることをおすすめする。 ギャラリーBの入り口付近には、形状の異なるオリジナル・スピーカーを大量に用いた大規模なインスタレーション、『Sprout“fizz”』(2024年)が展示されている。 2024年3月に旧Bunkamura Studio(渋谷)で発表されたシリーズ第1作を発展させた本作では、無数のスピーカーからさまざまな自然環境音が鳴り響き、新しい生命の息吹を感じさせる作品となっている。 鑑賞者は作品のなかに入り込み、スピーカーのあいだを自由に歩くことができ、場所によって変化していく音の世界を味わうことができる。 ギャラリーBには、ほかにも、特殊印刷や平面パネルスピーカーなどの最新技術を使い、パネル自体が音を発する「音の出る絵画」シリーズの『Score of Presence』(2019年)や、暗闇のなかでうなるような低音が響き、微かな映像が映し出される新作『Embryo』(2024年)などが展示されている。