platform 3(東京) 3人で東中野のオルタナティブ書店「人が集まれる場所にしたい」
本を売るだけではない、人が集まる場所に
新天地で店を始めるには、拠点を決めなければいけない。loneliness booksは多文化共生の街・大久保にあったので、その要素は活かしたい。まずは大久保界隈で探したが、ピンと来る場所が見つからなかった。次はもう少し範囲を広げて「大久保文化圏」圏内の早稲田に行ってみたけれど、持続可能な予算内の物件は、いずれも広さが足りない。その後オンラインで探していたところ、今の東中野のビルと出合うことができた。 「本屋ですが、本を売るだけでなくて『人が集まれる場所が欲しい』という思いがあって。いろいろなことができるぐらいの広さが欲しいなと思っていたんです。ここは約35平方メートルあって、自宅でやっていた本屋と同じぐらいの広さですが、自宅は本を置けるスペースが限られてしまうし、予約制にしていたので来店のハードルが高めでした。ここは駅のすぐ横だから、ふらっと立ち寄りやすいかなと」(潟見) エレベーターのないビルの4階である点だけがネックだったが、ともまつさんも丹澤さんも即OKした。 照明を買ったり壁の展示スペースを作ったりはしたものの、棚や机はそれぞれが使っていたものを持ち込んだので、内装のための初期投資はほぼなかったという。現在の在庫はZINEも含めると約3000冊あるが、仕入れはloneliness booksと(TT) pressがそれぞれに別個にしているが、棚は分けていない。 loneliness booksはもともと東アジアのクイアやジェンダーに関する出版物を扱うところから始まっていることもあり、クイアやジェンダーをテーマにした本が充実している。また東アジアがテーマの映画やデザイン、写真集や絵本もセレクトされている。 「中国語も韓国語も読めるわけではないのですが、消えゆくものに関する本って韓国や台湾でも作られていて。そういう本を中心に集めています。あとは大久保という多様なバックグラウンドを持つ街が好きなので、移民に関する本も重視しています」 たとえば以前、ブックギャラリーポポタム でも見かけて気になっていた、パク・ヒョンソンという写真家による『ソウルの銭湯』は、韓国タイポグラフィー学会の仲間によるものだと潟見さんが教えてくれた。韓国でも銭湯はどんどん減りつつある。そんな東アジアの街の記録を知りたくなったら、ここに来ればいいのだな。 ともまつさんと丹澤さんの (TT) pressは、お互いのクリエイターとして活躍する友達をはじめ、ステキなものを手掛ける人の作品を並べている。取材時は(TT) pressが、バンコクのブックフェアに参加した時に見つけたZINEや書籍のコーナーがあった。私自身も初めてお目にかかるものばかりで、ついじっと見入ってしまった。 「いろいろな場所にいって、そこでステキなものを見つけて皆に紹介できる場所があることが、とてもうれしいです」(ともまつ)