開幕5戦5発の大久保嘉人はC大阪の何をどう変えたのか?
熊本県の強豪・大津高から鹿島アントラーズ、ファジアーノ岡山、ベルギー1部のオイペンをへて昨シーズンにセレッソへ加入。けがで途中離脱を強いられながらも、復調した後半戦で5ゴールをあげた豊川は、横浜FC戦の前半25分に今シーズン初ゴールとなる先制点を決めた。 敵陣の右サイドからボランチの原川力があげた、山なりのロングパスが強風に揺られる。素早く落下点に入った豊川は、飛び出してきた相手ゴールキーパー南雄太が味方と重なり、体勢を崩した隙を突いて巧みにバックヘッドを一閃。無人のゴールにボールを流し込んだ。 「キヨ君(清武)やタツ(坂元)、オッ君(奥埜博亮)やリキ君(原川力)がやっぱり前を見てくれるので、僕と嘉人さんはゴールすることに集中できるとプレーしていて感じています」 チームが開幕から5試合連続で複数得点をあげてきた理由を問われた豊川は、良質なパスを供給してくれる中盤を形成する、左右のサイドハーフとダブルボランチの名前をあげた。横浜FC戦の後半アディショナルタイムには高木もミドルシュートを決め、大久保以外はゴールを決めていなかったフォワード陣でようやく豊川、加藤、高木が「1」で続き、シーズン初の連勝で白星をひとつ先行させた。 今シーズン最多となる4ゴールのなかでも、大久保のそれは横浜FCへ大きなダメージを与えた。 5分前の後半10分に清武が放ったミドルシュートのこぼれ球を、誰よりも早く相手ゴール前へ詰めた大久保が拾い、南を十分に引きつけた上で左側にいた豊川へパスを出した。しかし、雨水がたまったピッチが影響したのか。フリーだった豊川の右足は、ボールをとらえられなかった。 そして、九死に一生を得たとばかりに直後に横浜FCが同点に追いつき、さらに攻勢を強めていた矢先に大久保が雄叫びをあげた。心理的にショックを受けたと、横浜FCのMF松尾佑介は言う。 「同点にして、これからというときに失点してしまったのが痛かった」 勝負どころも見極めている大久保の一撃がチームを鼓舞し、日々の立ち居振る舞いを介して影響を受けてきたフォワード陣が続いた。ジュビロ磐田でプレーした2019シーズンは1ゴール、J2の東京ヴェルディに所属した昨シーズンは無得点に終わり、限界説もささやかれながら復帰したセレッソで「1試合、1試合必死ですよ」と笑う38歳のベテランが、いまや中心で光り輝いている。 2019年11月から「185」で足踏みしたままだった、J1歴代トップを独走する通算ゴール数は、開幕から2週間で一気に「190」に達した。前人未到の大台到達へのカウントダウンが進んでいくたびに大久保が放つ存在感が増し、セレッソへさまざまな相乗効果をもたらしていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)