開幕5戦5発の大久保嘉人はC大阪の何をどう変えたのか?
23歳の加藤は中央大学から加入した昨シーズンのツエーゲン金沢で、42試合を戦う長丁場のJ2戦線にチームでただ一人、全試合に出場。チーム最多の13ゴールをあげた実績を評価されて、昨年末にセレッソへ完全移籍で加入した。そして、年が明けてまもなくして、大久保の復帰が決まった。 「最初はちょっと恐る恐る、という感じでしたけど、いまはいい人だとわかっているので」 15歳も年が離れた、雲の上の存在と言っていい大久保へ、新チームが始動して間もないころはちょっぴり恐縮しながら、いま現在では積極的にあれこれと聞いていると加藤は打ち明ける。 「一番はやっぱりシュートの打ち方というか、いつも『どうやって打っているんですか』とよく質問しています。でも、ちょっと自分が真似できるような打ち方ではないので」 大久保の説明や、実際に練習や試合で目の当たりにしたシュートに驚いていると、今度は「自分自身に合ったような打ち方、形を決めた方がいいよ」とアドバイスされた。いまでは「もう練習あるのみだと思っています」と笑う加藤は、横浜FC戦の後半42分に待望の瞬間を手繰り寄せた。 中央付近でパスを受けたキャプテンのMF清武弘嗣が素早く反転し、左サイドへ駆け出していたFW高木俊幸へスルーパスを通す。スピードに乗った体勢で相手を引きつけた高木が、がら空きとなった中央へ折り返す。全力でフォローしてきたのは、4分前に途中出場していた加藤だった。 「トシ君(高木)が本当に素晴らしいボールをくれたので、僕はしっかりボールを見て右足に当てるだけ、という感じでした。なので、今日はトシ君に感謝しています。とにかく数字を残したかったので、少ない時間のなかで結果を残せたことを本当に嬉しく思っています」 前節の清水エスパルス戦の終了間際に、加藤は自ら獲得し、蹴ったPKを止められていた。それでも周囲から「次、次」と励まされてから3日後に決めた、記念すべきJ1初ゴールとなる3点目。すべて途中出場ながら、加藤を4試合で起用してきたレヴィー・クルピ監督も思わず相好を崩した。 「チャンスをつかんだときに『絶対に結果を残す』という強い気持ちを常に見せていた」 がむしゃらさや必死さが現時点における加藤の最大の武器だとすれば、大久保の「自分自身に合った――」というアドバイスが、特にメンタル面でしっかりと生かされていた跡が伝わってくる。 横浜FC戦を含めて、5試合中で4度にわたって大久保と先発で2トップを組んでいる、26歳の豊川雄太も「日本でナンバーワンのストライカーだと、僕は思っています」と畏敬の念を抱く。 「その人と一緒にプレーできているのはすごく幸せなことであり、学べることが数多くある。一番は点を取れるところを知っている、というのをすごく感じています」