今季2度目のハットトリック!なぜ横浜F・マリノスのFW前田大然はJ得点王争いのトップを独走しているのか?
期待に応えた前田の一撃でペースを握ったマリノスは、立て続けに2ゴールを追加。同41分にはトップ下のマルコス・ジュニオールが担い、同21分の2点目を含めて5度すべてで成功させてきたPKのキッカーが初めて前田に託された。 「チームメイトが僕に(得点王を)取らせてくれる、という感じにしてくれている。僕はそれに応えないといけないと思っている」 意気に感じた前田のPKはど真ん中を狙うもコースはやや右側へ、波多野がダイブした方向へずれてしまう。それでもインステップで思い切り蹴った分だけ豪快に撃ち抜き、後半開始早々の3分には左サイドからDFティーラトンが放ったクロスに、ディフェンダーの合間を縫い、さらに波多野の前方へ飛び込みながら頭をヒットさせた。 「PKはちょっと反省ですけど、3点目はクロスに入っていく自分の持ち味を出せた」 8月15日の大分トリニータ戦以来となる、今シーズン2度目のハットトリックを振り返った前田は、自身のポジションについてこんな言葉を紡いだ。 「前の方が自分はやりやすいかな、というのはありますけど、それはチームが決めることなので。与えられたポジションで、しっかりと結果を残せてよかった」 FC東京戦後と同じニュアンスの言葉を、今夏の東京五輪前にも前田から聞いた。 「トップの選手なので、やはり一番前で出たいという気持ちはあります」 東京五輪の代表入りをかけた、最後のアピールが繰り広げられていた6月上旬。前線のポジションでどこを望むのか、と問われた前田は胸中に抱く本音を、U-24日本代表を率いる森保一監督との面談で隠さずに伝えたと明かした。 「どちらをやりたいかと聞かれて、前をやりたいですとしっかり言いました。最終的にどこで使われるのかは、あとは監督とコーチ陣が決めること。左サイドであろうが、1トップであろうが、そこでしっかりと結果を残さないといけない」 照準を定め続けてきた東京五輪代表には名を連ねた。ただ、新型コロナウイルス禍で大会規定が変更され、バックアップメンバーの4人も登録メンバーに加わった状況下で、1トップのファーストチョイスは林大地(現シントトロイデン)が射止めた。 林と交代でピッチに立つのは上田綺世(鹿島アントラーズ)であり、前田は[4-2-3-1]システムの2列目左サイドの控えという位置づけだった。U-24フランス代表とのグループリーグ最終戦でゴールを決めても、序列は最後まで変わらなかった。 3トップを敷くマリノスでも、センターフォワードは東京五輪前までは日本代表にも選出されたオナイウ阿道(現トゥールーズ)が、東京五輪後はブラジル出身のレオ・セアラや、浦和レッズから期限付き移籍で加入した杉本健勇が担った。 不慣れだった左ウイングを、それでも前田は必死に自分の色に染めてきた。 「マリノスではウイングがワイドに張り続ける形を求められるけど、僕はそれがあまり得意ではない。なので、サイドからどんどん中へ入っていこうと自分なりに考えてきた。点を取っているときは、ほとんどが中に入ってプレーしているときなので」 左ウイングでゴールを量産してきた前田は、自らを「決して上手い選手じゃない」と公言してきた。それでも、後半18分から左ウイングに回ったFC東京戦では、センターフォワードとしてプレーしたなかでも現在進行形で進化する跡を披露した。