「ステージ4の膵臓がん」父が沖縄で子に見せた姿とは?ー亡くなる13日前に敢行した7日間の大移動ー
「細山さん、沈着冷静なんですよ。何が起きてもこの人がいれば大丈夫だなって思えた。私たちの見えないところで、父が寒そうにしていたらサッと毛布をかけてくれたり。おかげで私たち家族は旅に集中することができました」(愛里さん) ■沖縄での最初の2日間 無事、沖縄に到着した一行は、予約していたホテルに向かった。そこは秀俊さんがまだ元気だった頃、夫婦でハワイ旅行をした際に宿泊したのと同じ系列のホテルだった。そのホスピタリティの素晴らしさに感動し、娘たちにも体験させたいと、父たっての希望だった。
「確かに素晴らしいホテルでした。ウェルカムドリンクがとても美味しくて、長旅で疲れていた父も、うまいうまいって飲んでいました。そしたらホテルの人がおかわりを持ってきてくれて(笑)」(愛里さん) 沖縄での4日間、秀俊さんの医療的なケアをするのは、現地の訪問看護師である。担当するのは国頭郡にある『ひまわり訪問看護ステーション』の代表豊里泰子看護師だ。 ツアーナースは医療保険がきかない自費サービスである。沖縄に滞在中の4日間は、ツアーナースの細山看護師ではなく、医療保険が使える訪問看護に切り替えれば、それだけ費用を抑えることができる。これは日本ツアーナースセンターからの提案だ。つまり、沖縄にいる4日間は、細山看護師はオフということである。本来は自由に過ごしていいのだが、細山看護師にそのつもりはなかった。
「結局、向こうにいる4日間もびっちりお世話になりました」(愛里さん) ■もしかしたら沖縄から帰れないかもしれない 沖縄滞在中の稲本秀俊さんの医療的なケアを担当する豊里泰子看護師の話。 「沖縄にいる4日間だけ、というご依頼には当初戸惑いもあったのですが、診療情報提供書などの書類もあるし、なによりツアーナースの細山さんがいてくれるということで、安心してお受けすることにしました」 そんな豊里さんが印象に残っていることがある。