就活セクハラ相談深刻「ホテル連れ込まれそうに」「大量に酒を飲まされた」…社員と学生の接触増え
2019年には大手ゼネコン「大林組」の男性社員が、仲介サービスを利用し、就活中の女子学生にわいせつな行為をしたとして逮捕される事件(同年に社員は不起訴)が起きている。
企業側もイメージが失墜しかねないトラブルの回避に努めている。
事件を受けて大林組は、学生の訪問を受けられるのは、ハラスメント研修を受けた社員に限定した。面会時に「ハラスメントをしません」、連絡は「会社のメールアドレスを使用します」などの宣言文が書かれたカードを学生に手渡すなど、再発防止策を徹底する。
日本生命保険は、「採用コンプライアンスマニュアル」を作成し、仲介サービスへの登録禁止、個室での1対1の懇談は原則不可としている。広報担当者は「就活でのトラブルは、企業としての責任も問われる。学生と社員の双方を守るためにルールは必要」と話す。
大学も学生を指導する。
都内の私立女子大は就活ガイダンスで、男性社員を訪ねる時は「カフェなどのオープンな場所で会う」「夜の訪問や、面談中の飲酒は避ける」「仲介アプリに安易に頼らない」などの「防衛策」を示している。
関西大(大阪)は、卒業生の連絡先は対面で学生に提供し、採用と関係ない要求をされたらキャリアセンターに相談するよう伝えている。
日本ハラスメント協会の村嵜(むらさき)要代表理事(41)は「社員は学生の上司ではなく、要求に従う必要は全くない。疑問を感じたら、一人で悩まず周囲に相談してほしい」と呼びかけている。
企業に防止策を義務付けへ
厚生労働省は、企業に就活セクハラの防止策を義務付ける方針だ。
従業員へのセクハラに対しては、男女雇用機会均等法で、企業に相談窓口の設置や事実関係の確認、再発防止に向けた措置などが義務付けられている。しかし、雇用関係にない就活生は対象外だった。
議論を進めていた労働政策審議会(厚労相の諮問機関)は、11月の会合で「(就活生は)事業主と対等ではなく、不当な人格攻撃があっても何も言えない人が大半。人権の観点から対応することが必要だ」という意見が出された。
同省は法改正で、就活生を従業員に準ずる立場と位置付け、OB・OG訪問を受ける際の場所や時間についてルールを定めるほか、相談窓口を就活生にも周知することなどを義務化する。これらを盛り込んだ同法改正案を来年の通常国会に提出する予定だ。