カネか伝統か? 京都市が直面する「景観」と「経済」のジレンマ! タワマン、本当に必要? 高さ規制緩和で変わる街並みを考える
歴史と成長のジレンマ
日本を代表する観光都市、京都市。平安京遷都以来、数多くの歴史的建物がその街並みに息づいている一方で、現在も活気に満ち、成長を続ける都市でもある。 【画像】「なんとぉぉぉぉ!」これが京都駅烏丸口の「大行列」です! 画像で見る(12枚) そのため、京都は常に以下の選択を迫られている。 ・景観保護を最優先にした厳格な「高さ規制」を維持すべきか ・それとも、規制を緩和し、産業の発展を優先すべきか 高さ規制とは、京都市内で建物の高さを制限するための規制であり、歴史的な都市として景観や文化的価値を守るために、厳しい制限が設けられている。特に市中心部や観光地周辺では、伝統的な町並みを守るために規制が強化されている。この選択が、今後どう進むべきかは大きな問題だ。 京都市では2007(平成19)年から新しい景観政策が施行され、建物の高さ制限は10mから31mの6段階に分けられ、地域ごとの特性に応じた適用が行われている。 例えば、四条河原町や四条烏丸のような幹線道路沿いでは、最大31m(約10階建て相当)の高さが許可されているが、鴨川沿いや川端通などの町屋が残る旧市街地では、建物の高さは15m(4~5階建て相当)に制限されている。
人口流出と京都の財政難
厳しい規制に対して、都市活性化を求める声が高まり、規制緩和の必要性が次第に明らかになった。これを受け、京都市は2023年4月から都市計画の見直しを行い、一部の地域で高さ制限を大幅に緩和することを決定した。 具体的には、JR京都駅南側の大通り沿いでは、従来の20~25mから31mに高さ制限を引き上げ、外環状線沿いでは制限を撤廃。また、JR山科駅周辺の大通り沿いでは、1階を店舗にするなどの条件を満たすことで高さ制限を撤廃することとなった。さらに、南部の工業地域では、建物の容積率が400%から最大1000%に拡大されることになった。容積率とは、土地の面積に対して建物の総床面積がどれだけの割合を占めるかを示す指標だ。 景観政策の見直しに踏み切った背景には、京都市が抱える深刻な経済問題がある。規制によってマンションやオフィスの供給が制限され、若い世代を中心に人口流出が進んでいる。特に隣接する滋賀県大津市では、マンションの坪単価が 「京都市の半額程度」 と安価で、子育て世代に人気が集まっている。 もともと京都市は都市規模に比べて深刻な財政難に悩んでおり、その一因は人口構成にある。京都市には年間数千万人の観光客が訪れるが、住民税を支払うことはない。また、人口の約1割を占める学生も、住所を登録していないため住民税の課税対象にはならない。さらに、京都を代表する寺社仏閣は 「固定資産税の対象外」 となっており、観光や学問という京都市の特徴的な資源が、税収には必ずしも結びついていないのが現状だ。