カネか伝統か? 京都市が直面する「景観」と「経済」のジレンマ! タワマン、本当に必要? 高さ規制緩和で変わる街並みを考える
景観規制が招く税収減少の深刻化
このような状況は、京都市の税収にも深刻な影響を与えている。京都市の市税収入は、他の政令指定都市に比べて大幅に少ない。2019年度のデータによると、政令指定都市の市民一人当たりの市税収入は平均21万5504円だが、京都市は20万8353円で、 「3.3%」 少ない。この差は、京都市の人口約147万人を考慮すると、年間で105億円もの税収が少ないことを意味する。京都市の税収構造は、 ・個人市民税:38.4% ・固定資産税:35.1% が市税収入の7割以上を占めている。そのため、住宅やオフィスの建設が制限されると、市の税収も大きく減少せざるを得ない。現在の厳しい景観規制は、京都らしさを維持しながらも、市民サービスを支えるための税収確保に対する大きな障害となっているのである。 一方で、規制緩和に対しては強い反対の声も存在する。例えば、2022年11月に規制緩和が議論された際、京都弁護士会は 「この都市計画の変更により、他都市でよく見られるようなタワーマンションの建設が可能となり、京都の独自性が失われるのは時間の問題である」 とする意見書を提出し、見直しに強く反対した。 観光資源として世界に誇る景観を守るべきか、それとも成長する都市として高層建築を受け入れるべきか。インバウンド観光が盛況な今、京都市は歴史的な選択を迫られている。
筆者の意見
景観規制の緩和が京都の歴史的価値を損なうのではないかという懸念は理解できるが、京都市が“千年の都”として今後も発展し続けるためには、現在進められている規制緩和が不可欠な選択だといえる。 その理由は、京都が単なる観光地ではなく、実際に多くの市民が暮らしている 「生活都市」 であることにある。これまでの厳しい景観保護政策は、住宅供給を大きく制限し、その結果、一般市民が京都に住むことが困難になってしまった。 特に近年、不動産価格が高騰し、京都の住宅を購入できるのは主に海外や市外の富裕層に限られている。彼らは別荘として住宅を利用することが多く、住民登録をしないため、住民税は納めず、固定資産税のみが支払われている。こうした状況は、京都が“住まう街”としての機能を弱めていることを意味している。 京都の持続的な発展には、実際に住み働く市民が不可欠だ。そのため、必要な規制緩和は慎重に計画されており、緩和される対象となるのは、京都市内でも伝統的な中心市街地である洛中ではなく、 「洛外の地域」 が中心となっている。規制緩和が行われたエリアのひとつである西院駅周辺は、ちょうど境界のあたりに位置している。 このように、規制緩和は京都の歴史的景観を損なうことなく、必要な住宅供給を促進するものであり、都市の活力を保つためには、この程度の規制緩和が必要な選択だといえるだろう。