【高校ラグビー】日本航空石川「被災した人たちの分まで」11トライ大勝発進 目標は震災から1年となる3回戦
第104回全国高校ラグビー大会が27日、大阪府東大阪市の花園ラグビー場で開幕し、1回戦9試合が行われた。今年1月1日に発生した能登半島地震で甚大な被害を受けた日本航空石川は鹿児島実に73―8で大勝した。大会には51チームが参加。28日に1回戦の残り10試合が行われる。 震災を経験した日本航空石川が、聖地でたくましい姿を見せた。平均体重で約13キロ上回る大型FWを中心に攻め、計11トライを挙げて圧倒。スタメンで唯一の石川県出身であるCTB上野魁心主将(3年)は「被災した人たちや、やりたいことができない人たちの分まで戦おうと言っていたので、そういう試合を表現できてよかった」と納得の表情で振り返った。 前半2分に連続攻撃からトンガからの留学生CTBウィリアム(1年)がゴール右へ先制トライ。その後も体格差を生かして守備網を破壊した。 例年はトンガ人選手の個人技が目立つが、飯沢、アルメイダ聖の両ロックはともに180センチ台後半の長身で、FL立松も184センチと大柄。FW戦に優位に立つと、BK陣も縦横無尽に駆け回った。試合終了間際の後半30分には敵陣ゴール前右から、SO小嶋が逆サイドでフリーのWTB西川へキックパス。巧みなプレーで快勝劇を締めた。 今年元日の能登半島地震で石川県輪島市にある学校が被災。選手は岐阜県にある中部大の施設など各地を転々とし、現在は東京都青梅市にある明星大の使わなくなったキャンパスに全生徒が移り、学校生活を送っている。 上野は「いろいろな所に行って、団結力は上がった」という。東京が拠点になったことで、流通経大柏、早実など関東の強豪校との練習試合が増え、強化につながった。それでも、地元を忘れたことはない。「輪島の人に喜んでもらうことが大事」と紙谷直樹監督(57)。この日も試合前に「輪島のために、石川のために」と意識を共有し、白星を届けた。 地震発生からちょうど1年後の来年1月1日に行われる3回戦が当面の目標だ。2回戦で戦うBシードの国学院久我山(東京第2)とは3週間前に練習試合を行い、敗れたものの2点差の接戦だった。「セットプレーから抜かれることがあった。集中力が切れないようにしたい」と上野。1年間の思いを込めて、難敵にぶつかる。
中日スポーツ