大いに収穫があった箱根・ポーラ美術館探訪で観た展示とは?
遠い……遠いっすわ~……。 箱根のターミナル駅である箱根湯本駅から箱根登山電車で40分、到着した強羅駅で専用シャトルバスに乗り10分。 東京・新宿駅から箱根湯本駅まで小田急ロマンスカーで90分なのは差し置いても、まー長い。 さらに落とし穴がありまして、箱根登山電車の待ちが15分、シャトルバス待ちが20分。 「強羅駅からタクシー使えばよくない?」とのご意見もあろうかと思いますが、タクシーぜんぜん来ず。 「バス待つかぁ……乗れなかったらどーしよう…」状態でした。 平日の大雨、極寒。 そうです、東京でもグッと気温が下がり14度ほどになったこの日。 薄着な服装も、傘持ってない備えのなさも全部自分が悪いのですが。 周囲の人々がヨーロッパ系観光客だらけで、異国情緒ありすぎの箱根。 自分も観光客なのに日本の風土が色濃い場所にいると、「ようこそいらっしゃいませ」な地元民気分になるものですね。 寒さでガタガタ震えてるクセに。 【画像多数】フランス人芸術家フィリップ・パレーノの作品ほか記事の画像を全て見る さて、そんなこんなでネガティブムード高まるなか到着したポーラ美術館。 箱根湯本に取材の用事がありまして、せっかくだからと向かいました。 「観光はポーラ美術館だけでいいや」と。 フィリップ・パレーノの企画展も興味ありましたし、なにより山の木々に囲まれた現代的な建築物を体感したくて。 ずっと気になりつつも足が遠のいていた場所にようやく行ってきたワケです。 広々とした数部屋にわかれた、フランス人芸術家フィリップ・パレーノのインスタレーション。 映像、ハイテク技術のディスプレイなどがあったなかで、心惹かれたのが天井をバルーンで埋め尽くしたこの空間作品。 異様な生き物のようで不気味でもありますが、バルーンが軽快なため開放感もあります。 部屋は美術館のそのままで、天井だけが変貌している光景はとても新鮮でした。 部屋の広さを活かした展示でしょう。 ただ……作品点数少なすぎ!? 企画展全体では正直物足りなさを感じましたね。 空間づくりにあまり手が込んでいない印象も。 (いまだ2019年森美術館での塩田千春展「魂が震える」の空間つくり込みの凄まじさが頭にこびりついてます) とはいえ東京都内の展覧会だったなら、入館料¥2,200を考慮してもさほど不服がなかったかもしれず。 辛口評価になってしまったのは、入りがネガティブだったこの日のわたしの心境が要因な可能性も。 めちゃめちゃ手間かけて山の中にやって来たけど……という感情が作品鑑賞を上回ったかもしれないです。 しかし!その一方で別アーティストのさりげない展示がなかなか心地よく。 ポーラ美術館から助成も受けている鈴木のぞみさんのコンパクトな展示部屋。 眼鏡や窓などのヨーロッパの骨董品のガラス面に感光する液剤を塗り、写真を焼き付ける手法の作家さんです。 「外に風景が見える窓枠が動く映像?」と思いますよね。 実は円の内側が鏡になってます。 鏡にモノクロの人物像を焼き付けた写真。 窓枠はこの部屋に展示された別の作品です。 鏡に反射してこのような見え方になったのです。 アート作品を直接観に行く醍醐味ですね。 会場での反射作用が作者の狙いかは不明ですが、偶然だとしてもいろんな角度から眺めて楽しめました。 ホントに小さな作品でしたから(すみません、正確なサイズは記憶があいまいでお伝えできず)、やや目が疲れたものの気分はすっきり。 気分すっきりといえば、ポーラ美術館って歴史的な美術作品の所蔵が凄いんですね! 印象派を中心にしたコレクションで、有名芸術家というだけでなく作品そのものの質がとても高く。 テカったガラス保護なしで間近でじっくり見られるのが所蔵品ならではの嬉しさ。 ファッション写真好きにも愛されるヴィルヘルム・ハマスホイがいたり。 (現代的な色と構成ながら1899年の絵)。 サイケな色彩に「うぅ……」とうならされるクロード・モネがいたり。 10代の学生のとき心惹かれてたアメデオ・モディリアーニがいたり。 トータルでは大いに収穫があったポーラ美術館探訪となりました。 特徴のひとつである樹木に囲まれた遊歩道は、大雨で少し歩けただけでしたが。 箱根を代表する名所として名高いポーラ美術館。 オープンした2003年から時が立ち、各地に魅力的な美術関連施設がたくさんできたのは喜ばしいことですね。 近年にリニューアルしたクリエイティブ空間なら、最寄り駅からのアクセスが良好な大阪中之島美術館や京都市京セラ美術館があり。 自然との一体化なら、海沿いの神奈川県立近代美術館 葉山館もとても素敵。 (ポーラ美術館と同年開業) 東京の中心部なら、六本木の国立新美術館や21_21 DESIGN SIGHTもお洒落ですしね。 遠方で暮らす人がポーラ美術館のためにだけ箱根に行くのはなんとも贅沢な時間の使い方でしょうが、数日間滞在できる方ならここでのんびり過ごすのもいいかもれません。
写真・文:一史