なぜ川に見える 「天の川」の正体とは? 夏は観測のチャンス
上から眺めると丸い形をしていた銀河は、横からに視点を移すと平べったい、つまり細長い形をしています。この時点で私たちはまだ、天の川銀河の外にいます。ここから、太陽系を目指す宇宙旅行をイメージしてみましょう。
前に進んでいくと、細長い天の川銀河が少しずつ大きくなっていきます。天の川銀河の正体は無数の星の集まり。中に入ると、近くにある星の1つひとつが見えてきます。太陽系のあたりまで来ると、天の川銀河の中心は依然として遠くに見えていて、近くの星々は星座をかたどっています。 ここで、視線を水平に、真横に移してみてください。同じ円盤の面に沿って眺めているので、円盤の中心方向ほどではないにしても、たくさんの星が見えるはずです。180度回って後ろを見ると、頭の中の宇宙旅行で通過してきたあたりの星が見えます。そのまま360度回って元の位置に戻ってくるまで、星が集まった帯のようなものがつながっていることでしょう。これが、夜空を横切る天の川の正体です。
元の位置に戻ったら、今度は真上に視線を移してみてください。円盤の面から垂直に、外に向かって視線を移したので、星の数がグンと減ってしまいます。これが、夜空の大半を占める、天の川以外の部分です。
夜空に天の川が見えたら
天の川の正体、イメージできたでしょうか。そして、同じように内側から円盤の面に沿って眺めても、中心の方を見たときと反対側を見たときで、濃淡の差が出てきます。(どら焼きにギッシリ詰まったあんこが見えるか、端の方の生地しか見えないかの差ですね) この天の川の一番濃い部分は、さそり座やいて座といった夏の星座のあたり。8月であれば日没後の南の空に見えます。ここから夏の大三角、カシオペヤ座を通り、冬の大三角のあたりへとつながっていきますが、冬に見える天の川は円盤の中心と反対側を見ているので、あまり濃くありません。だから、夏が天の川を眺める良い季節なのです。 そして、夜空を横切る天の川を実際に見ることができたなら。その星の帯が地面の下を通って、360度つながっていることをイメージしてみてください。あるいは、自分が今立っているところから、その星の帯に沿って広がっている円盤(どら焼き)を想像してみてください。星空や宇宙の、遙かな奥行きを感じられるかもしれません。
---------------------------------- 日本科学未来館 科学コミュニケーター 谷明洋(たに・あきひろ) 1980年、静岡県生まれ。少年時代から天体観測と写真撮影が趣味。京都大学大学院農学研究科を修了後、静岡新聞記者を経て現職