「変動ではなく固定」「借り換えは早いと不利」 金利と住宅価格が上昇する今、知っておきたい住宅ローンの新常識
国土交通省が公表した不動産価格指数 によれば、2024年7月分は前月比で0.4%下落したものの、前年同月比では3.3% 上昇しており、住宅価格は高い水準で推移しています。 【画像】住宅ローン減税の新常識 加えて最近では金利も上昇しており、住宅を取り巻く環境はさまざまな変化を迎えています。これまでの考え方を変えるタイミングにあると言えるでしょう。今変化している住宅ローンに関する常識を3つあげ、ご紹介します。
1. 住宅ローン減税は全面的に新築有利→環境性能を満たさない新築住宅は不利
住宅ローンを利用して住まいを取得した場合に一定の要件を満たすことで利用できる住宅ローン減税ですが、2022年の税制改正により新築住宅に適用される要件が大きく変更されました。 2021年までは新築住宅であれば、認定住宅を除き一律の住宅ローン残高限度額(4000万円※認定住宅は5000万円)と13年の控除期間が設けられていました。しかし2022年以降は以下のとおり、主に環境性能によってカテゴリが細分化され、残高限度額が徐々に減額、控除期間にも差が設けられました。 背景には、法改正により、2025年4月以降すべての新築住宅へ省エネ基準適合が義務化されることや、さらに2030年までにはZEH水準まで適合基準が引き上げられることがあります。
2025年以降は2023年末までに建築確認を受けたことを証明できる場合や、2024年6月末までに竣工済みであることを確認できる新築住宅のみが住宅ローン減税の適用対象となります。 なお、一定の要件を満たす子育て世帯・若者夫婦世帯が2024年に入居する場合には、一般住宅を除き、引き続き2022・2023年入居の場合と同様の借入限度額が適用されますが、2025年に入居する場合は、2025年入居の限度額が適用される見込みです。※今後の税制改正によっては、内容が変更になる可能性があります。
2. 住宅ローン借り換えは早いほど有利→早いと不利
これまでの住宅ローンの借り換えであれば、住宅ローンの残高が大きい早期のタイミングほど有利とされていました。しかし、最近では住宅ローン契約の構造が変化しており、早期の借り換えは不利となるケースが出てきました。 民間住宅ローンを利用して住宅を取得する際、以下のような諸費用が必要となります。 ・融資事務手数料 ・保証料 ・印紙税 ・団信保険料 ・火災保険料 ・地震保険料 最近の変動金利型住宅ローンでは、契約当初の保証料の支払いを不要とし、代わりに借入金額に応じた融資事務手数料を契約時に支払ういわゆる「事務手数料型」のものが増えてきています。住宅ローンを契約するのは初めて、という方は多いので、気にされる方は少ないのですが、保証料と融資事務手数料は立て付けが異なるため、その違いを理解しておくことが大切です。 まず保証料は、融資にあたって金融機関を通じて保証会社に支払う費用で、万が一住宅ローン返済が滞った場合に備えて、保証会社で管理されます。保証料を契約当初に支払う「保証料型」では「事務手数料型」よりも金利が高くなるのが一般的ですが、保証料は借入金額と期間、金融機関や保証会社、人によって金額が変わりますし、もし繰上げ返済をした場合には、保証会社所定の利率・計算方法により計算された保証料の返戻を受けることができます(※保証料を前払いした場合)。 一方、融資事務手数料は、文字どおり、融資にあたって金融機関等に支払う事務手数料です。借入金額に定率でかかるのが一般的で、いわば掛け捨てのお金となります。つなぎ融資を利用する場合、二回に渉って必要になる可能性がありますし、審査によっては事務手数料型であっても、保証料の支払いが必要になるケースもあります。 もし事務手数料型の住宅ローンを選択しているのであれば、短期間で乗り換えをする際には、その構造上、支払う融資事務手数料の分、総返済コストがかさむ可能性があります。早期のタイミングでの借り換えは、利息負担額のほかのコストも含めた総返済負担額でみると、損となる可能性があります。