累計7500万本売れた「豆腐バー」豆腐業界の常識を覆すヒットの理由に迫る!
さらに一歩先を見据えた新商品も開発中だ。それが液体のようになった「飲む豆腐」。 「豆乳とは違って、ちゃんと豆腐です。豆乳とにがりを固めて豆腐になっています」(池田) 普通の豆腐よりも吸収が早く栄養素を取り込みやすいため、スポーツ時の栄養補給や、災害時の非常食など、新たな市場を開拓しようとしている。 「最終的には究極の制約下である宇宙空間でもお豆腐が食べられるように。今やっていることをどんどん進化させていった先には、月の上というところがあるのではないかなと思っています」(池田)
安売り競争からの脱却~こだわりの「クラフト豆腐」とは
現在、豆腐の平均単価は88円。お手頃価格のイメージが消費者に根付いているだけに、メーカーとしては値上げしづらい状況だ。そんな状況から抜け出そうと池田が進めているものがある。 10月下旬、池田が青森にやってきた。開発中の新しい豆腐に使う大豆を自分の目で確かめようというのだ。 地元農家に見せてもらった収穫したばかりの大豆は「おおすず」という品種。風味豊かで大粒なのが特徴だ。タンパク質が多く含まれていて豆腐に適しているという。
「『クラフト豆腐』というのを作ろうと思っています。クラフトビールのように原料にこだわって、職人たちの腕を使って、アサヒコにしかできない本当においしい豆腐を作ろうと思っています」(池田) 作り方にもこだわる。にがりの量や豆乳の濃度などを一から見直し、ワンランク上を目指すのが「クラフト豆腐」だ。 「クラフト豆腐」の狙いは、低価格に据え置かれた豆腐の現状を変えること。品質の良さをスーパーのバイヤーにアピールし、値上げを認めてもらおうというのだ。 試食をした「ライフコーポレーション」チーフバイヤーの渡辺亮太さんは、「口当たりから違いますね、全然。大豆の風味、香りもしっかり鼻から抜けるような感じがあって、すごく甘さもあって、非常においしかったです」と言う。反応は上々だ。 価格について、池田は「国産の充填(じゅうてん)豆腐と同じくらいの価格で販売したい」と説明する。コストはかかるが、食べ応えがある分、容量を減らすことによって、消費者が手に取りやすい価格を維持していくという。 ※価格は放送時の金額です。 ~村上龍の編集後記~ 入社3カ月後に米国へ出張。豆腐が硬さごとに売られていて、調理法を変えていた。帰国してすぐに「硬めの豆腐」を、社内では「意味不明」。硬くするという発想に対しては「豆腐を冒涜(ぼうとく)する」池田さんは、豆腐は素人。だが熱意は本物。協力者が現れる。しかも次々に現れる。にがりの量や豆乳に入れるタイミング、かき混ぜ方も変え実験に明け暮れた。セブン‐イレブンが興味を示し、20年に「豆腐バー」を発売。7500万本を売った。控え室に女性スタッフが数人いた。夢を共有する仲間だ。夢は、「宇宙」だ。 <出演者略歴> 池田未央(いけだ・みお)1972年、愛知県生まれ。1995年、東京農業大学を卒業後、三星食品に入社、「キシリクリスタル」などを開発。2013年、寿スピリッツに入社、「メープルマニア」を開発。2015年、独立して商品開発のコンサルティング業。2016年、アンリ・シャルパンティエ入社。2018年、アサヒコ入社、マーケティング本部長に。2023年、代表取締役に就任。 ※「カンブリア宮殿」より