巨大ダイオウイカや珍しい貝類50種の日本初展示も!“貝類愛” にあふれる上野「貝類展」
東京・上野の国立科学博物館にて、企画展「貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか」(~2025年3月2日)が開催中だ。同館での貝類の大規模な展示は1983年以来実に41年ぶり。総合監修を務めた動物研究部 海生無脊椎動物研究グループの長谷川和範研究主幹は「展示を企画するにあたって、貝の自然史というよりも貝と人間の関わりということに重点を置いた展示をしよう考えた」という。 【写真】微小な貝から美しいウミウシまで貴重な貝類標本を600種以上展示! 展示のポイントについて「一般的に無脊椎動物の中で、軟体動物という動物門の炭酸カルシウムの殻を持ったものを貝類と呼ぶ。実は貝殻の存在は微妙なもので、タコやイカやウミウシなどをすべて含めた軟体動物という意味の展示になっている。さらに、人間と貝類は貝塚の頃から他の海生無脊椎動物と比べてはるかに深い関わりを持ってきた。そうしたことからいろいろと考えてほしいということでこういうタイトルをつけた」と長谷川研究主幹。
日本館1階の中央ホールから始まり、序章「貝類の世界」では、貝類とはどういう生物なのかという概要を紹介する。頭上には貝殻を持たない貝類の代表として、特別展「深海」でも話題となったダイオウイカの実物大模型が展示され、貝類の進化を初期の貝の化石から現生する貝のプラスティネーション標本までで表現。貝類に特有の器官の解説や貝に似た動物、最大の貝、最小の貝なども展示している。
第1章「貝類の多様性の成り立ち」では、生物としての貝類の全体像を見ていく。現生する軟体動物は大きく8つの綱(こう)グループに分かれ、そこから「上科」と呼ばれる分類群を代表する約270種類の標本が並ぶ。二枚貝綱(ホタテガイ、カキやアサリの仲間)や頭足綱(タコやイカの仲間)、腹足綱(巻貝、ウミウシ、カタツムリの仲間)はそれぞれ独立した展示コーナーが設けられ、生息環境や貝殻の形態、貝殻を持たないなどの多様な貝類も紹介する。
展示方法も凝っていて、1cm以下の小さな貝は実物の隣に拡大写真を展示。乾燥標本は黒いソフトボードの上に正しい姿勢で固定され、液浸標本はすり合わせ瓶のほか、視認性を高めるためにパウチに入ったものも。ウミウシの仲間は、美しい色を保ったグリセリン標本をきしわだ自然資料館からレンタルしている。