【保存版】『鬼滅の刃』の儲ける仕組み、売上爆増させた…前例のないプロモ戦略とは
約120年続く日本映画史史上、最も売れた映画は『鬼滅の刃 無限列車編』だ。その売上は、国内404億、世界総興行収入517億円に上り、全世界で4135万人が劇場に足を運んだ「世界最高の興行収入の日本アニメ映画」としてギネス記録にも認定されている。今回は2016年にマンガ連載を開始し、2019年からアニメ化され、2020年の世界ギネスともなった『鬼滅の刃』の関連売上の規模や、ファンを獲得していったプロセスについて分析していきたい。大ヒットを生んだ裏側には、アニメ化を率いたアニプレックスのプロモーション戦略が大きく関係している。 【詳細な図や写真】『鬼滅の刃』はどのようにファンを獲得していったのか? 歴史上最大の爆発的ヒットが生まれるまでの流れを解説する(記事の後半で解説します)
作品のヒット率を左右する? 担当編集者の力とは
『鬼滅の刃』の原作者である吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏は、1989年生まれの女性漫画家だ。高校3年生(2007年)で初めて漫画制作を試みたときはまったく描けなかったという吾峠氏だが、2013年、「鬼」と「鬼狩り」との闘いを描いた初めての読切作品『過狩り狩り』(かがりがり)が第70回JUMPトレジャー新人漫画賞の佳作を受賞する。そこから、いくつかの読切作品を経て、誕生したのが『鬼滅の刃』である。 連載開始の2016年から数年の間に、短期間で爆発的なヒットを起こした『鬼滅の刃』だが、このヒットはどのような要素から作られたものだったのか。本作の誕生を支えた編集者、作品が誕生した時代背景、本作のプロモーションを率いたアニプレックス社の戦略などの視点から分析していきたい。 この作品における重要な要素として担当編集者の存在は大きい。編集者の力がヒットにどれほど影響するかという議論は、この半世紀、数多くなされてきた。だが特定の編集者にあまりにヒットが集中していることを考えると、素人の想像以上に編集者の影響は大きい。 担当編集の片山氏は、2010年集英社入社で『ブラッククローバー』(2015~)、『鬼滅の刃』(2016~2020)、『呪術廻戦』(2018~2024)の立ち上げ編集者でもある。同じ法政大卒で先輩にあたる林士平氏も、2018年に「少年ジャンプ+」配属後、『SPY×FAMILY』(2019~)、『チェンソーマン』(2019~)、『ダンダダン』(2021~)とヒットを連発している。特定の編集者におけるヒットの出現率の高さは、作家の個性のみならず、編集者の個性の重要さを物語る。 そんな担当編集の片山氏が目を付けた吾峠氏の才能は、「圧倒的なセリフの力」だった。一言一言でそのキャラの背負った経験や人生を象徴するセリフの力が『鬼滅の刃』を特徴づけており、それをどこまで一般に咀嚼可能な形に“丸めるか”は編集と作家の職人芸だ。 倒した鬼の手を握って「神様、どうかこの人が今度生まれてくる時は、鬼になんてなりませんように」と願う炭治郎、このコマは「少年漫画らしくないからカットしようか」と迷った吾峠氏に対して、片山氏が「ここだけは絶対に入れてください。こんな主人公見たことないです。これが炭治郎ですよ!」と熱弁をふるって入れたというエピソードもあるほどだ(注1)。 このように、連載マンガに常にある「尺の限界」という制約の中で、何をどこまで見せるかという判断は常にこうした作家と編集の個人的な会話で決められ、時に致命傷に、時に神回にもなる。それほどまでに編集者の存在は大きいと言えるかもしれない。 注1:『鬼滅の刃』大ブレイクの陰にあった、絶え間ない努力――初代担当編集が明かす誕生秘話.livedoor News. 2020年2月5日,