【保存版】『鬼滅の刃』の儲ける仕組み、売上爆増させた…前例のないプロモ戦略とは
前例ない…ありとあらゆる手を尽くした「プロモ活動」の裏側
そして、アニプレックスの宣伝プロデューサーである高橋祐馬氏が先導する形で「知る限り前例がない」ほどのプロモーションが行われる。 2019年3月に1~5話で構成される特別版を劇場公開し、4月からの公開も深夜アニメにも関わらず地方20局で展開(通常は4~5局)。全国の70%のカバー率にもっていくためにはCMの枠代もずいぶんと高く付いてしまう(広げた地方局のCM枠代も製作委員会が負担する)。さらに視聴者の没入感を阻害しないために、「売り物」になるCMすら第1話ではすべて廃している。 そして動画配信サービスの契約社も20社契約、Abemaからdアニメからどんどんと広げる。制作費を回収するには「1社独占」で契約料をもらうのが通例であったが、そうした放送・配信から収益を上げるのではなく「とにかくリーチを広げること」を最重要視した。 これらの高コストのプロモ戦略は、よほど中身に自信がないと難しかっただろう。5~10社と思惑の異なる出資社がいればできなかった判断は、3社のみというスリムな出資体制だから実現できたことでもある。 『進撃の巨人』『Dr.Stone』『ヴィンランドサガ』など、トップアニメひしめくこのシーズンに人気を博し、ソニーミュージック所属のLiSAが歌う主題歌『紅蓮華』のヒットと2019年末の紅白初出場など、話題も途切れず、「2019年大ヒットの1作」として目覚ましい成果を上げた。こうして、ここから約1年後に控える劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』まで駆け抜けるはずだった。
【図解】なぜコロナ禍に爆発した?当時の衝撃の売上とは
『鬼滅の刃』が「今年大ヒットの1作」から「今世紀大ヒットの1作」になったのには、コロナという世紀レベルの大激震の影響を抜きには語れない。 2020年4月の緊急事態宣言にアニメ制作は総崩れとなり、20本以上の作品が放送延期で夏以降にズレた。全世界がリモートに移行する中で、突然の自宅待機を命じられた人々の目に飛び込んだのはACジャパンのCMと再放送番組ばかりの地上波、ほとんど新作のないアニメリールの中で、どのチャンネルでもピックアップされていたのが、“その前年のヒットアニメ”『鬼滅の刃』だった。 売ることより広げることを最優先した2019年の戦略が、未曽有の事態において想像していなかった追い風となる。 毎日「#鬼滅の刃」というワードを何人がつぶやいているかの平均をとると、2019年のアニメ期は10~12万人とかなりヒットした状態で、すでに「名探偵コナン」のピークを抜き去り、ドラえもんや進撃などを超えている。秋以降も紅白などで話題が途切れず、2020年に入っても維持している。 そして2020年10月の劇場版『無限列車』で“毎日”16万回つぶやかれる過去最高のピークをつけながら、そのままコラボなどが年間を通じて活性化したまま2021年12月からのアニメ2期「遊郭編」までずっと話題に上り続けていることが分かる。 VTuberホロライブや初期ちいかわ、呪術廻戦をしてもここまで話題が維持されているという状態には及ばない。