【保存版】『鬼滅の刃』の儲ける仕組み、売上爆増させた…前例のないプロモ戦略とは
鬼滅誕生の2010年代、漫画界に起きた“ある変化”
そのほか、作品のヒットを生んだ要素として、同業界における漫画家のポジションの変化も関係しているかもしれない。 漫画家の性別は基本的に非公表だが、SNS普及などによって近年は露見してきているケースも多い。推測の域を出ないものも多いが、たとえば『青の祓魔師』(2009~)の加藤和恵氏、『約束のネバーランド』(2016~2020)の出水ぽすか氏など、2010年代のヒット作における女性マンガ家比率の上昇がみられる。同じように、『鬼滅の刃』の作者・吾峠氏も女性である可能性が噂されている。 これはジャンプの女性比率が半分近くなってきて、「ジャンプ女子」という言葉が生まれる2010年前後という時代も影響している。 2016年は正直、マンガ業界にとって暗い時代だった。『週刊少年ジャンプ』は653万部に到達した1995年からずっと落ち続け、2014年ごろから落ちが加速、ついには200万部を割りかけていた。 トップ作品は10年以上も『ONE PIECE』が君臨し続け、『NARUTO』や『黒子のバスケ』『トリコ』も連載終了。熊本地震もあり、トランプ大統領誕生もあって2016年を象徴する漢字の1つには「震」、電子マンガが急拡大する予兆が見えなかった夜明け前の暗い暗い時代に、輪をかけるようにシビアな世界観設定ではじまったのが『鬼滅の刃』であった。
最初の爆発を生んだ…アニプレックスの超革新的な戦略
本作はTVアニメとしても革新的なビジネスモデルを展開した。それまで20年にわたって「アニメ製作委員会」を立ち上げ、複数関係者が分散的に作品製作費を出資する形が通例となっていた。しかし、『鬼滅の刃』の場合は、委員会にテレビ局も広告代理店も入れず、ほとんどアニプレックス1社が出資する形となった。 委員会に名前を連ねるのも原作の集英社とアニメ制作会社のufotableだけ。この1社+2社による集中投資は、驚くほど早いタイミングでジャッジされている。 まだコミック1巻も発売されていない期間にこの原作に目を付けアニメ化を希望したアニプレックス社長の岩上敦宏氏と宣伝プロデューサーの高橋祐馬氏は、『空の境界』『活撃 刀剣乱舞』「Fateシリーズ」など、10年以上にわたり一緒に仕事をやってきたufotableとアニメ化を推進したのだ。 『鬼滅の刃』はこの時代、ジャンプでは必ずしも人気作ではなかった。最初の20話まではほとんどが10位以下、5位以内に入るのは、『鬼滅の刃』のキャラクターである胡蝶しのぶが登場し、鬼殺隊柱合裁判に至る、連載から半年経過した後だ。 物語の舞台が遊郭に移る「遊郭編」に突入した2017年末頃にようやく5位までの人気上位に固定化していったことを考えると、もう1~2年アニメ化が遅れていてもおかしくはなかった。企画からリリースまで2~3年はゆうにかかるようになっていた当時で、『鬼滅の刃』を連載スタートから2年強の2019年4~9月にアニメ化までもってきたのは、アニプレックスの推進力の現れでもある。