【保存版】『鬼滅の刃』の儲ける仕組み、売上爆増させた…前例のないプロモ戦略とは
【図解】年齢層はどう広がった?鬼滅ファンの獲得の流れ
より分かりやすいのは次の図だろう。ファンになって最初に買うのはコミックの1巻。その購入者はアニメ期に月5万部、アニメ放送終了後も月5→10万と増え続け、2019年末に累計100万人に至っていた「第1巻購入者」。実はその爆発期は2020年で、1~3月だけで150万人近くが購入、その後勢いとまらず劇場版『無限列車』の頃には400万人の手に渡っていた。 「アニメ終了後、半年たってから4倍になった」というのは、明らかに違う年齢層がコロナ期に流入した証拠でもある。20~30代が中心の「マンガ連載読者」でも、10~20代が中心の「アニメ視聴者」でもなく、突然の子供とのロックダウン生活において『鬼滅の刃』こそがお茶の間に話題を提供し、共有するための社交材となったことで、2020年は30~40代の「マス・親世代」が最大の顧客になったのだ。 『鬼滅』コミックはアニメ化前まで350万部、アニメ化放送後で2500万部。それが劇場版の爆発とともに20年末に1.2億部に到達した。「マスにヒットする」という意味でこれほど美しい曲線を描いたマンガ作品は過去事例がない。2020年のベネッセの「小学生が選ぶ!2020年あこがれの人」アンケートでは1位:竈門炭治郎、2位:お母さん、3位:胡蝶しのぶで、10位に至るまで両親と先生以外はすべて鬼滅キャラで埋め尽くされる事態になった。 かつてここまで1つの作品が、国民全体に浸透したことがあっただろうか。2020年4~5月の緊急事態宣言後、5月に漫画連載は終了。2020年10月に公開された『無限列車』は幸運に恵まれ、2021年は1~3月、4~9月と繰り返される緊急事態宣言の間隙をぬって『千と千尋の神隠し』の記録を100億近く上回る404億。 映画直前にTVアニメ版をゴールデンタイムで放送するプロモーション型の放送・劇場連動はその後『呪術廻戦』など他アニメでも定番の手法となった。2020年12月の23巻最終巻の発売、さまざまなコラボが走り、2021年10月には『無限列車』の0話を入れた再放送にゲーム『ヒノカミ血風譚』の発売、そのまま『遊郭編』の放送とつなぎ、一切のスキがない完璧なメディアミックスが実現した2年間だった。 ここ数年でTBS、日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日など放送局が相次いで映画事業部のアニメ担当者を基軸に「アニメ事業部」として昇格させたのも、10年以上前から続いていたクールジャパン政策がアニメを基軸に2023年頃から再起動されていったのも、このBeforeコロナとAfterコロナの切れ目で世紀的大ヒットとなった『鬼滅の刃』の新しいアニメプロモーション戦略の影響が多分に影響している。