福岡国際マラソンで箱根駅伝出身の“新星”服部勇馬Vの衝撃。日本マラソン4強時代へ。
東京五輪代表「3」枠を巡り4強の激戦
これまでのマラソン練習では、40キロ走を2~3回こなす程度だったが、今回は40キロを7回、45キロも1回実施。距離走の間には25~30キロジョグを入れるなど、走行距離は月間で300キロくらい増えて、10月は1000キロを突破した。 「動きを変えるのではなく、ピッチを上げる。回転をうまく連動させて上げていく感じです。1回目、2回目のマラソンは30キロ過ぎにアクセルを踏んでしまって、ラスト5キロで失速しました。アクセルを踏まずとも、3分ペースを持続できればいいので、そういう対策をしてきたんです。今はキロ3分ペースをどれだけ楽に維持できるのか。僕自身が描いている理想のマラソン像に近づけたと思いますし、それをキロ2分59秒、2分58秒にしても余裕ができれば、2時間5分台、4分台も見えてくるんじゃないかと思っています」 トヨタ自動車の佐藤敏信監督によると、服部は7月に日本陸連の米国・ボルダー合宿に参加して、ジャカルタ・アジア大会で金メダルを獲得した井上大仁(MHPS)らのトレーニングを見て、「練習が足りない」と気づいたという。 そこから練習への取り組み方が変わり、走行距離が大幅アップ。佐藤監督は、「条件がそろえば、2時間7分台を狙えるんじゃないでしょうか」と話していたが、服部は高温多湿のなかで2時間7分台前半に突入するというさらに上の快走を披露した。 「持てる力を出してくれたことに感激しましたし、今回は見事な花を咲かせてくれた。日本マラソン界は3強から4強になったと思います」と尾縣専務理事。3強とは2時間5~6分台のタイムを持つ大迫、設楽、井上だが、服部も彼らのレベルに急接近したと言っていいだろう。 来年9月15日に開催されるMGCは、服部を加えた“4強”を軸に最大「3枠」の日本代表を争い戦うことになる。 「もう少し早い段階でスパートして、ひとりで逃げ切れるような力をつけることが、MGCには必要になってくる。福岡は平坦なコースなのでビルドアップできましたが、MGCのコースは終盤、上りがあるので、その対策を考えていかないといけません。気温も高くなりますし、MGCまでは欲張らず、しっかり準備したいと思っています」(服部) プリンスから日本のキングへ。終盤の戦いで、「クールな攻め」を見せた服部勇馬が先輩たちに勝負を挑む。 (文責・酒井政人/スポーツライター)