鉄道ファンは必見!北海道を疾走するSLから長崎・軍艦島まで。本物の迫力あふれる左幸子監督作品が蘇る
北海道・追分で働く保線作業員の家族ドラマを描き、疾走する蒸気機関車(SL)も登場する本物の迫力たっぷりの映画「遠い一本の道」(1977年)が国立映画アーカイブ(東京都中央区)で上映される。監督・企画・製作を担当し、出演もしているのは女優の左幸子。「日本の女性映画人(2)―1970~80年代」の一環として、2月10日と16日に、かつて「SLの聖地」として知られた追分の鉄道風景が銀幕によみがえる。
物語の中心は、北海道・追分の保線区で働く保線作業員・滝ノ上市蔵(井川比佐志)とその妻である里子(左幸子)。機械の導入や人員削減などの合理化に翻弄される市蔵やその同僚、そして彼らの家族の姿を通じて、労働の尊さが描きだされていく。 国鉄労働組合と家族会が全面的に協力したことから、線路上での作業から、妻たちの内職に至るまでドキュメンタリー的に撮影したシーンも多い。この映画の出演者は、市毛良枝、長塚京三、大滝秀治、西田敏行ら多彩だが、実際の鉄道労働者やその家族も多数出演している。
映画では、線路脇に並ぶ保線作業員たちの姿が映し出される場面がある。線路に耳をあて、自分の耳に聞こえる音で、現場の状況を確認する作業員もいる。 また、夜の鉄道官舎に「線路に土砂崩れ」との電話があり、現場に急ぐ市蔵。シャベルを持って懸命に復旧作業をする市蔵や同僚たち。作業を終えたとき、一同が発する「おうー」という大声。そんな真に迫った場面を次々に見ていると、映画をみているというより、本当の鉄道の作業現場にいるような感覚になってくる。 鉄道ファンにとってこたえられないのが、SLの「D51」や貨物列車などが何度も何度もスクリーンに登場することだ。疾走するSLの横を一緒になって走ろうとする子どもたちもいる。何よりも、走行している場所が、本物の70年代の北海道の美しい風景であるのがうれしい。
映画の紹介から離れるが、追分では今もD51を見るチャンスがある。 かつて石炭輸送の拠点だった追分駅(北海道安平町)にはSLの基地「追分機関区」があり、連日SLが出入りしていた。 だが、石炭の時代は過ぎ、国鉄のSLは76年3月、追分地区での9600形による入れ換え作業を最後に運行を終えた。 ラストランの地ということで、安平町鉄道資料館では、「D51」320号機が保存されている。道の駅「あびらD51ステーション」に併設する鉄道資料館は、3月29日までの冬期には土曜・日曜、祝日は開館し、平日は閉館する。暖かくなってくれば、D51が屋外に出てくるイベントも行われる。