マイクロソフトが世界中で2兆円超のAI投資、その狙いはどこにあるのか?
AI市場の拡大見込みとROIの行方
マイクロソフトによる一連の大規模投資の狙いの1つは、AI利用を促進し、ChatGPTやOpenAIのAPI利用を増やすことにある。背景には、OpenAIがマイクロソフトのクラウドサービス「Azure」を利用している関係がある。 Agioによると、ChatGPTはテキサス州サンアントニオにあるMicrosoft Azureのデータセンターにホストされている。ChatGPTサービスは7500以上の仮想マシン上で稼働するKubernetes上で運用されており、プロンプトやAPIコールを処理。また、ChatGPTは約570ギガバイトのデータを活用して、ユーザーからの問い合わせに対応している。2019年、OpenAIはマイクロソフトと提携。これに伴いGPTモデルの運用をAzureに移行したといわれている。 マイクロソフトは、OpenAIとの関係をさらに強化する計画も明らかにしている。The Informationの報道(3月29日)によると、両社は2028年の稼働開始を目指し、「Stargate」と呼ばれるAIスーパーコンピューターを含む1,000億ドル規模のデータセンタープロジェクトを計画しているという。 このプロジェクトは、現存する最大級のデータセンターと比較して100倍ものコストがかかるとされる。マイクロソフトが資金を提供し、米国内に建設される見込みだ。 報道によると、アルトマンCEOとマイクロソフトは、スーパーコンピューター計画を5つのフェーズに分けており、Stargateは第5フェーズに位置付けられている。現在は第3フェーズの真っ只中にあり、今後2つのフェーズでは必要なAIチップの調達に多額のコストがかかるとされる。 一方で、こうした巨額投資に対する投資収益率(ROI)の行方を懸念する声も出ている。計画の総額は1,150億ドルを超える可能性があり、これはマイクロソフトが昨年サーバー、建物、その他の設備に費やした資本支出の3倍以上に相当するという。 しかし、AI市場の急速な成長を考えれば、この投資が将来的に大きなリターンをもたらす可能性も十分にある。これまでの予測では、AI市場は2030年頃までに1兆3,000億~1兆8,000億ドルに拡大する可能性があるとされる。これは現在の9~10倍ほどの規模に上る。マイクロソフトの2023年の年間収益は2,110億ドル、このうちAI関連ではAzureが800億ドル、Copilotが120億ドルだった。2030年までにAI市場でのシェアを仮に10%獲得するだけでも、その影響は非常に大きなものになる。 マイクロソフトは、その大胆な投資戦略によって、AI時代における地位をどこまで高められるのか。今後の動きからも目が離せない。
執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部