マイクロソフトが世界中で2兆円超のAI投資、その狙いはどこにあるのか?
ブラックロックとの提携、スリーマイル島原子力発電所再開
マイクロソフトのAI関連投資は、単独での取り組みにとどまらない。9月17日、同社は世界最大の資産運用会社ブラックロックとの提携を通じ、AIデータセンターとそのエネルギーインフラに投資する大規模な団体「Global Artificial Intelligence Infrastructure Investment Partnership(GAIIP)」の設立を発表した。 GAIIPには、ブラックロックが買収を進めるインフラ投資会社Global Infrastructure Partners(GIP)や、アラブ首長国連邦のテック投資家MGXも参加。初期段階で300億ドルの資金調達を目指し、将来的には最大1,000億ドルまで拡大する計画だ。この資金は、新規および既存のデータセンター開発や、AI処理に必要な電力インフラへの投資に充てられる。 マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは「金融界と産業界のリーダーを結集し、未来のインフラを持続可能な方法で構築することを目指す」と述べている。この動きは、OpenAIのChatGPTなどの生成AIモデルを実行するためのNVIDIA GPUを搭載したデータセンターの需要急増を背景とするもの。AIの処理に必要な電力消費量の増大や、データセンター新設におけるボトルネックの解消が課題となっている。 一方、AIデータセンターの電力需要増大に対応するため、マイクロソフトは原子力発電所の再稼働にも動き出した。9月20日、同社は電力会社Constellation Energyとの20年間の電力購入契約を締結。これを受け、Constellation Energyは、2028年までにペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所1号機の再稼働を目指すことになった。 スリーマイル島原子力発電所といえば、1979年に2号機で発生した部分炉心溶融事故で知られる。米国史上最悪の原子力事故として記憶に刻まれているが、今回再稼働するのは事故を起こしていない1号機だ。1号機は2019年に経済的理由から運転を停止していたが、AI時代の到来による電力需要の急増を受け、再び脚光を浴びる格好となった。同社は発電所の名称を「Crane Clean Energy Center」に変更し、2028年までに16億ドルを投じて再稼働に向けた準備を進める。 マイクロソフトにとって、この契約はデータセンターの消費電力をカーボンフリーエネルギーでまかなうという目標達成に向けた重要な一歩となる。ゴールドマン・サックスの予測によると、2030年までに米国の総電力需要の8%がデータセンターによって消費されるという。現在の3%から大幅に増加する見通しだ。