四千頭身・後藤拓実「次の目標はM-1決勝」第七世代ブームを経て、ネタへのモチベーションが上がった「次の5年」《インタビュー》
2024年12月6日、お笑いトリオ・四千頭身の後藤拓実さんによるコラム集『安心できる男』(中央公論新社)が上梓された。本書は、2019年4月から2024年3月まで読売新聞で連載していたコラムをまとめた一冊。本書でコラムは年代ごとにまとめられており、後藤さん自らが細かく過去に言及するセルフ解説も収録。また、相方の都築拓紀さん・石橋遼大さんによる本書の「読書感想文」も収録されている。
四千頭身は、2010年代後半からはじまった“お笑い第七世代ブーム”に乗り、若くして一躍スターに。しかし、芸人生活がずっと順調だったわけではない。連載していた5年間を振り返り、後藤さんは今なにを思うのか。そして、次の5年で目指すこととは……。 (取材・文=堀越愛 撮影=川口宗道)
ただの情けない事件も、コラムにすることで伝わる事件に
――テレビやライブ、YouTubeなどさまざまな仕事があるなかで、コラムを書き続けることは大変ではありませんでしたか? 後藤拓実さん(以下、後藤) 2019年から連載をスタートしたんですけど、当時は締め切りがきつかったですね。去年からは「まだ締め切らないのか」っていう感じです。時間あるな~と、余裕を持って提出できました。 ――書くのに慣れたからですか? 後藤 いや、時間ができたからです。第七世代ブームが去ってからは、余裕で書きまくれました。 ――では、連載終盤に書いた文章のほうがより筆が乗っている? 後藤 乗ってるというか……濃いですよね、筆圧が。第七ブームのときは「100ある仕事のうちのひとつ」という感じだったけど、終盤は「2個ある仕事のうちのひとつ」だったので(笑)。 ――書くことは楽しかったですか? 後藤 楽しくはないですね。時間ができて長考して書くようになってからは、「どう書こう」と考えだしてまとまらなくて、1回寝てみたりすることもありました。
――本書に収録されているコラムのなかで、後藤さんが特に好きな話を教えてください。 後藤 フライト中に鼻血が出てしまった話ですね。コラムに書けなければただの情けない事件で。エピソードトークとして話しても伝わりにくい事件だったので、書いたことでじっくり伝えられたかなと。好きな話です。 ――本書には、相方の都築さん・石橋さんの読書感想文が載っていますよね。相方の読書感想文を読んだとき、どう思いましたか? 後藤 ふだん、彼らの(テレビ出演時などの)アンケートを見る機会がないので、「ここに句読点入れるんだ」とか新たな発見があって楽しかったですね。 ――自分が書いた文章を相方に読んでもらうって、どんな気持ちですか? 後藤 ネタは僕が書いて渡してるんで、そんなに新鮮さはなかったです。ネタも、僕がパソコンで書いてデータで渡してるんですよ。 ――都築さんも石橋さんも、後藤さんならではの“書き出し”に言及されてましたね。後藤さんの書き出しを意識した読書感想文になっていました。 後藤 いや~、僕は毎回書いてたんでね、1回書いたくらいで生意気な顔されても……ってのはあります。でも意識してくれたのはちょっと嬉しかったですね。 ――コラムの書き出しには、こだわりがあるのでしょうか? 後藤 毎回違う自己紹介をやるようにこだわってました。自己紹介なしで原稿を送ったことがあるんですけど、そしたら担当編集さんにダメ出しをいただきまして(笑)。「今月はやる気ないですか?」と返信があったので、そこからはもう、毎回しっかり自己紹介から丁寧に入らせてもらってます。 ――担当編集さんからは、けっこうダメ出しが来るんですか? 後藤 たまにダメ出しいただくこともありました。ダメ出しというか……柔らかく「ちょっと寂しいですね~」みたいな。それで完全に僕には伝わりました。良い伝え方だと思います。 ――原稿を見た編集さんからの戻しで、特に印象に残っていることはありますか? 後藤 石橋の読書感想文に対しての、僕の感想文ですかね。厳しく言い過ぎだったみたいで、「もう少しまろやかにならないか」って意見をいただきました。ボロクソに言い過ぎてたみたいです(笑)。なので、棘を抜いてヤスリで削って再提出しました。