新幹線の座席(7519/stock.adobe.com)

年末年始が近づき、東海道新幹線が再び混雑する時期がやってきました。SNSを見てみると、最近は特に東海道新幹線車内での大型荷物の扱いに関するトラブルが多発しているようです。特に、外国人観光客と日本人客との間で問題が生じているという話も見受けられます。何か良い解決策はないのでしょうか。 【写真】東海道新幹線には2つの特大荷物置き場がある ■問題は特大荷物スペース JR東海・西日本・九州は、東海道・山陽・九州・西九州新幹線での特大荷物（3辺の合計が160cmを超え、250cm以内の荷物）の対策として、「特大荷物スペースつき座席」と「特大荷物コーナーつき座席」を設けています。 「特大荷物スペース」は車両最後部のスペースに設けられ、3辺合計250cm以内の荷物を対象にしています。「特大荷物スペースつき座席」が対象とする座席は普通車の場合、最後部のABCDEの5席です。 「特大荷物コーナー」は対象座席の最寄りのデッキにあります。「特大荷物スペース」とは異なり、デッキにある荷物棚といった感じです。対象とする荷物は3辺の長さがそれぞれ80cm以内×60cm以内×40～50cm以内です。「特大荷物コーナーつき座席」が対象とする座席の位置は号車により異なります。 これらの設備を利用するには事前予約が必要で、料金は無料です。しかし、SNSでは車両最後部の「特大荷物スペース」を巡ってトラブルが多発しているという声が上がっています。主な問題として、予約していない乗客が勝手に特大荷物を置いてしまうため、予約済みの乗客が荷物を置けなくなる状況が発生しているのです。さらに、勝手に荷物を置いた乗客の多くは、予約が必要であることを知らなかったとのことです。このような背景から、SNSでは解決策について熱い議論が繰り広げられています。 ■東海道新幹線のルールを文化規範にする ここからは東海道新幹線に絞って、特大荷物の現状を考えます。 そもそも1964年に開業した東海道新幹線は、開業当初からビジネス客を重視しており、開業当初は現在のように特大荷物を持った訪日観光客が多数利用する状況を想定していなかったように思います。バカンスが短い日本と、長期休暇を取る欧米の習慣の違いからも、自然と荷物の量に差が出てしまいます。 そのため、東海道新幹線の車内（座席部分）には特大荷物対応の荷物棚はありません。「座席部に荷物棚を設置すればよいのではないか」という意見もありますが、荷物棚を置くとその分座席数が減ってしまいます。 東海道新幹線は、オンシーズンには満席になることも珍しくありません。近年は「のぞみ」が全車指定席になっており、座席数の削減は利便性の低下につながると思います。 解決策の一つとして、訪日観光客や一般観光客が「東海道新幹線のスタイルに合わせる」という方法が考えられます。つまり、東海道新幹線のルールをこれまで以上に明確化し、国内外の旅行者に浸透・徹底させます。もちろん、多言語の対応も重要でしょう。 大げさに書くなら「一番速い列車はのぞみ」のような感じで「新幹線に持ち込める無料荷物は3辺合計160cm以内」と利用者の間で常識化することが理想だと思います。 具体的には、JR各社が航空会社のように、座席上やデッキの荷物棚に置ける荷物サイズを明確にし、なるべく例外規定を設けないシンプルなルールを設定。日本人・外国人問わず、新幹線乗車券を購入する際に荷物サイズに関する説明を行い、ネット・窓口問わず乗客から事前同意を得る仕組みを導入する。ルールに従わなかった乗客に対しては追加料金を課すなどの毅然とした対応を取る、といった感じです。 筆者の趣味は海外バックパッカーですが、海外での個人的な経験から考えると、「ルール・制度のシンプル化」が重要だと思っています。 そのため、ルールが複雑で課題の多い特大荷物スペースは廃止。一方、特大荷物コーナーは荷物棚のため存続でいいのではないでしょうか。 また、長期的な取り組みとして、スーツケースの売り場で「機内に持ち込めるスーツケース」のように、「東海道新幹線に持ち込めるスーツケース」という表示を国内外で広めることも重要です。このような取り組みが浸透すれば、自ずと荷物問題は解決に向かうのではないでしょうか。 いろいろな意見やアイディアがあると思いますが、現在の座席数を確保するという前提に立つと、筆者の考えは上記になります。 （まいどなニュース特約・新田 浩之）