なぜ西武は不振打線の爆発で連敗をストップできたのか…殊勲は育成ドラフト出身20歳のリードオフマン高木渉
5年ぶりとなる7連敗で5位に転落し、借金が今シーズン最多の8にまで膨らんだ非常事態で、西武は開幕投手のザック・ニールに連敗阻止の大役を託した。 対する楽天の先発も開幕を担った則本昂大。接戦が予想された一戦は、試合後の第一声で「まさかこういう試合になるとは思いませんでした」と西武の辻発彦監督が苦笑いした、壮絶な点の取り合いで幕を開けた。 ニールは初回と2回に3番の茂木栄五郎に連続アーチを喫し、3回には5番のステフェン・ロメロにも被弾して6点を献上。来日2年目で最短となるわずか3イニングでの降板に、ニールは「自分のキャリアのなかでも最悪の結果だった。まったくもってチームを助けられなかった」と肩を落とした。 先発投手が初回に失点するのは46試合で実に19度目。前夜まではそのうち12試合で敗れ、直近では7連敗中だった西武は、しかし、負のスパイラルに陥ることはなかった。初回に3点を奪って逆転し、再び2点のリードを奪われた2回にも2点をゲット。ロメロのソロで勝ち越された直後の3回にも、前述したメヒアの一発でまたもや追いついた。打線を鼓舞し、けん引したのは高木だった。 2点を追う初回にレフト前ヒットで出塁すると、源田もレフトへ流し打って続く。そして、外崎の送りバント処理で三塁封殺を焦った則本の悪送球で生還して、一時は逆転する勢いをもたらした。2回にはレフトの頭上を越える二塁打を放って1点を返し、さらに外崎のタイムリーを呼び込んだ。 「(高木)渉がいい形でつないでくれたので、ランナーを返す気持ちで打席に入りました」 外崎がこう振り返るように、体勢を崩されながらも変化球に食らいつき、逆方向へ安打を放つ高木の必死な姿が他の打者たちから迷いや雑念を消し去った。プロ初ヒット、初得点、初タイムリーを放った前夜に続き、堂々の猛打賞を達成したホープに辻監督も思わず目を細めた。 「彼のいい部分が非常によく出ました。球際に強いというか、低目の変化球も粘って外野にまでもっていく。非凡なバッティングセンスをもっているので、すごく楽しみですよね」 福岡・真颯館高時代に27本塁打を放った長打力を見込まれ、育成契約でプロの世界へ挑んだ。1年目の2018年に二軍公式戦で打率.278、6本塁打、24打点をあげて、オフに支配下選手への昇格を勝ち取った。しかし、背番号が「121」から「73」に変わった昨年の一軍でのプレーは、代打でデビューしてセカンドゴロに倒れた、6月6日の広島戦だけにとどまった。