王者の西武が泥沼7連敗のワケ
先発投手に託すタスクをあえて変えた。打順も大幅に組み替え、選手も入れ替えた。しかし、それでも負のスパイラルから抜け出せない。パ・リーグを連覇している王者、埼玉西武ライオンズが5年ぶりとなる泥沼の7連敗を喫し、借金が今シーズンワーストの8にまで膨らんだ。 本拠地メットライフドームで、東北楽天ゴールデンイーグルスに4-7で苦杯をなめさせられた13日の8回戦。ローテーション通りに先発のマウンドに立ったサブマリンの与座海人へ、西武の首脳陣はこれまでとは異なる指示を与えていた。辻発彦監督が試合後に舞台裏を明かした。 「与座は3イニングと決めていた。中継ぎ陣で勝ちにいくぞ、と試合前にコーチたちと話していた」 打者一巡をめどに先発投手が3イニング前後を投げ、その後をリリーフ陣で小刻みにつないでいくショートスターター。昨シーズンの北海道日本ハムファイターズが導入し、今シーズンでは読売ジャイアンツや福岡ソフトバンクホークスも用いたオープナー戦術に、西武は連敗脱出への糸口を見出だそうとした。 しかし、3イニングを無失点に抑えるはずだったプラン初回から暗転してしまった。 わずか6球でツーアウトを奪った与座だったが、3番・茂木栄五郎にライト前へ運ばれる。続く4番・浅村英斗が放った鋭いライナーを、8番・ライトでプロ初先発を果たした前夜に続き、1番・センターに抜擢されていた2017年の育成ドラフト1位、20歳の高木渉が目測を誤って後逸。記録上では二塁打となったものの、防げたはずの先制点をあっさりと献上してしまった。 誤算はさらに続いた。コーリー・スパンジェンバーグのタイムリー二塁打で、同点に追いついた直後の3回表だった。先頭の9番・辰己涼介に初球の失投をライトスタンドへ運ばれ、簡単に勝ち越しを許した与座は1番のルーキー小深田大翔、2番・鈴木大地に続けて痛打を浴びてしまう。
茂木のセカンドゴロの間に3点目を喫したところで、西武ベンチは予定を繰り上げて与座を降板させる。しかし、2番手としてマウンドへ上がった平井克典も浅村に2球目をレフト前へ運ばれた。 「ツーアウトからの(初回の)失点と、ホームランの後を抑えてほしかった」 ショートスターター戦術が奏功せず、3回までに4点を失ってしまった展開を、辻監督も計算外だったと振り返る。8度目の先発で最短となる3回一死でマウンドを降りた与座は、任せられたイニングをまっとうできずに喫した4敗目(2勝)に「チームに申し訳ない」と唇をかみしめた。 「ゾーンで勝負していくなかであれだけ弾き返されてしまうのは、力のなさだと思います。連敗が自分から始まったので、どうにか今日は止めたいと思ってマウンドに上がったんですけど」 直後の3回裏に高木が汚名返上のプロ初安打を放ち、3番・外崎修汰のレフト前タイムリーで生還。今シーズン初の4番に入ったエルネスト・メヒアが左中間を破るタイムリー二塁打で続き、この回限りで楽天の先発・松井裕樹をマウンドから引きずり下ろすことに成功した。 しかし、3イニング目の5回に入った平井が一死二塁のピンチを迎え、左打席に茂木を迎えた場面で登板した左腕・野田昇吾があっさりとライト前タイムリーを浴びる。ドラフト1位右腕の宮川哲、開幕ローテーションから中継ぎに回った今井達也とつなぎ、迎えた7回表に勝負は事実上決まった。 2点を追う状況で西武ベンチは今シーズン急成長を遂げ、勝ちパターンの方程式に組み込まれている160km右腕、20歳の平良海馬を6番手としてマウンドへ送った。剛速球で1番から始まる楽天打線をピシャリと封じ込め、逆転への勢いへと変える狙いが込められていたのだろう。 果たして、果敢に初球を狙った小深田が一、二塁間を破る。送りバントと内野ゴロで三塁に進み、浅村がフルカウントとなった直後にまさかのプレーが起こった。外角低目を狙うも手前でバウンドした148kmのスライダーを、キャッチャーの岡田雅利が必死に前へ弾いた。 平良自身は四球だと思い込んでいたのだろう。転がるボールを岡田が捕る間に無人と化したホームのカバーを怠ってしまい、小深田がスライディングすることなく6点目のホームを踏んだ。気落ちした平良に、5番のステフェン・ロメロもタイムリー二塁打でたたみ掛けた。辻監督が思わず嘆いた。 「7回の失点が悔やまれる。何のために平良を出したのか。そこを意識してほしかった」