“妊娠の可能性広げる選択肢”「卵子凍結」ってどんなもの? 専門医に聞く 東京都が助成スタート
■増える“生理の悩み”
――性への知識が乏しいことが「世界一の不妊治療大国」にも繋がっているのですね。 不妊治療だけでなく、「生理」についても理解が乏しい点は大きな課題です。月経関連疾患による労働損失は4911億円、1年間の社会的負担は6828億円とも言われています。 主に月経痛などにより労働の能率が落ちることが要因と見られます。ちなみに、現代女性の生涯の生理の回数はどれくらいだと思いますか? 平均で450回くらい。昭和の初期は、50~100回ほどでしたので、約9倍に増えています。
その理由として、生理の始まる年齢が昔と比べて4年ほど早くなってきていること、妊娠・出産の回数が減っていることがあります。1回の妊娠・出産により、生理がとまるのが2~3年といわれているので、出産回数の少ない現代女性は生理の回数が自ずと増えているんです。 そのことにより、卵巣や子宮に問題を抱えやすいと言われています。一方で、定期的にレディースクリニック(婦人科)で検診しているか、という質問に対して、7割の人が「検診していない」と答えています。 ――婦人科は、妊娠したらいくところ、健康に問題があったらいくところ、というイメージがありますが… そういう人が多いと思いますが、妊娠したら行く場所ではなく、結婚、妊娠する前にチェックしておくべきこともあります。また内診しなくてもわかることも沢山あります。 欧米では、かかりつけの産婦人科があるのは当たり前になっていて、アメリカの産婦人科学会では13~15歳でかかりつけの産婦人科を持つように言われています。つまり、生理がきたら婦人科のかかりつけをもつということですね。
■“生理不順”や“生理痛” 不妊や病気のリスクも
――なぜ、かかりつけ医が大事なのでしょうか? 定期的に通うことで、気軽に生理の相談ができるようになり、正しい知識も身につけられます。生理は個人差が大きく、病的なレベルなのか自己判断は難しいので、定期的にチェックすることが大切です。 生理に関する病気は、主に3つ。「月経不順」、「月経困難症」は400万人、「月経前症候群(PMS)」は600万人とみられています。「月経不順」は生理周期の乱れのことですが、通常の月経期間は25~38日で、これよりも短い、または長い場合は何かしらの問題を抱えていると見られます。 将来的な妊活だけでなく、健康にもかかわってきます。卵巣の機能が早めに落ちる人だと、骨粗しょう症、動脈硬化が早くでてきますし、排卵しにくい人ですと、糖尿病が5倍に増えるとも言われています。妊活しない人でも健康にかかわる問題なので、2、3周期以上生理周期が違う場合は必ず受診してください。 「生理痛ってあるのが普通」と思っている人は多いと思いますが、ないのが普通です。痛み止めを生理中に毎月飲んでいる人は、「月経困難症」にあてはまります。その場合、背景に疾患がないか必ず診てもらった方がいいです。疾患の中で一番多いのが「子宮内膜症」。3人に1人いると言われています。 子宮内膜症の人で、さらに不妊症になる人は30~50%。なので、生理痛は我慢すればいいものではなく、将来の不妊にもかかわっていることを知って頂きたいです。 ――婦人科にかかれば内膜症は治せるものですか? 基本的に内膜症に関しては、今ある段階から完全に良くすることは難しく、そこから悪くしないようにするのが通常の治療です。悪くしないために、低用量ピルを服用して今の状態をキープさせる。悪くなると、卵巣がんの発症にもかかわってくるので、放置しないようにすることが大事です。 ――月経前症候群・PMSとは、どういうものなのでしょうか? 生理がはじまる3~10日前から始まる様々な心身の不快症状のこと。その症状は様々で、下腹部痛、乳房痛、頭痛、手足のむくみなどの身体の症状だけでなく、イライラ、抑うつ、不安、興奮しやすいなど精神面の症状もあります。現代人の女性でPMSがある人は多いのですが、6割が何もしていないというデータもあります。 ――PMSに対して何かできることはありますか? 生活習慣を見直すことや、お薬で症状を緩和することもできます。また程度が悪くならないうちに改善していった方が治りやすいと言われています。ですから、ひどくなってから婦人科へ行くのではなく、「もしかしてそうかも」という時点で治療をスタートさせてもらえたらと思います。