2050年までにチョコレートが食べられなくなる? 温暖化の影響を受け生産可能になった世界のエリアもーーこの先、生き残るのは誰か
フードテックのスタートアップは、「クリーン」なカカオ豆を提供
気候危機の影響で収穫が減り、価格が上がるカカオ豆は、森林破壊で炭素排出量を増加させ、気候危機に拍車をかけてもいる。フードテックのスタートアップは、気候危機とは無縁なカカオ豆の代替品の発見・開発に力を入れている。 ドイツのプラネットAフーズ社は、オート麦とヒマワリの種を使い、植物性脂肪などと混ぜ、カカオ豆を使わないチョコレート「チョヴィヴァ」を創り出した。オート麦は特別な方法で発酵・焙煎してある。「チョヴィヴァ」は、スイスのチョコレート大手、リンツ社を含むメーカーに供給。ドイツでは、12種類以上の製品の原料として、使用されている。 米国のヴォヤージュフーズ社は、ワインに使われた後のブドウの種を植物性油、きび砂糖、ヒマワリ油のタンパク質を利用した粉などに混ぜてチョコレートを作っている。2024年4月、カーギル社は、ヴォヤージュフーズ社のブドウの種製のチョコレートを菓子に採用することを発表した。 カカオ豆の代替品として、たった1つの食材を用い、カカオ豆の味と香りを再現しているのが英国のヌココ社だ。その材料とは、ソラマメ。ソラマメを生化学的プロセスで変化させると同時に、発酵・乾燥・焙煎・粉砕して、パウダー状にし、チョコレートの代替品として、菓子などに使う。2024年初めに130万ユーロ(約2億円)のシード資金を調達。2025年のローンチを目指し、月に数千トンを生産できるよう準備中だ。 ヌココ社は、欧州市場向けにソラマメを選んだのは、同エリアで豊富に採れ、コスト効率が良く、土壌にも良い影響をもたらすからだという。今後アジア市場に乗り出す際には、また違う、アジアならはの豆類を材料にする予定だという。こうすることで、同社が利用するテクノロジーを、柔軟性があり、規模の拡大にも対応できるものにしていこうという狙いがある。 2024年末に導入が予定されていた、欧州連合(EU)の森林破壊防止規則(EUDR)の施行が、2025年末に先送りとなったことが、10月に明らかになった。EUDRが導入されると、違法な森林伐採に関与していないことが証明でき、サプライチェーンのトレーサビリティが可能な商品のみ、EUに輸入できることになる。 今まで生産が振るわなかったエリアのカカオ豆が台頭し始め、代替品も登場。そこへ2025年にはEUDRの施行と、西アフリカのカカオ豆生産は、さらに苦戦を強いられるだろう。同エリアの、カカオ豆農家にとって死活問題であり、国の経済を担うだけに、今後の取り組みに期待がかかる。
文:クローディアー真理 /編集:岡徳之(Livit)