2050年までにチョコレートが食べられなくなる? 温暖化の影響を受け生産可能になった世界のエリアもーーこの先、生き残るのは誰か
健全な収益なくしては、病害虫防除、サステナブル農法、気候危機対策はあり得ない
今回のカカオ豆不足は、西アフリカのカカオ豆農家への支援不足を明らかにした。サポートが受けられれば、農家は再び以前のような収穫高を期待できる可能性がある。多くの農民が国際貧困ライン(2.15米ドル=約330円/日)以下の生活を強いられ、基本的な生活水準を維持するための金額未満で暮らしている。 カカオ豆の価格が高くなっても、農民への見返りはない。産出国の政府は、価格を前年の売り上げに基づいて設定しており、世界的に1トンの価格が1万米ドル(約153万円)を超えても、農家は1,600~1,800米ドル(約24~27万円)の固定額を受け取るのみと、データとリサーチを用い、社会に対する理解を含めるウェブサイト『Sustainability by Numbers』が伝えている。 現在のこの仕組みでは、最低額は保証されるが、価格が上がっても収入には反映されない。健全な収益を得られなければ、病害虫から作物を守ったり、より効率よく生産するための農法の導入は難しい。気候危機などの環境についての教育を受けることもできない。 2024年4月にはコートジボワール政府が50%、9月にはガーナ政府が45%、カカオ豆農家の収益アップを発表し、今後、西アフリカのカカオ豆の収穫減に歯止めがかかることが期待される。
今までカカオ豆の生産が無理だった香港などでも、気候危機でそれが可能に
一方、西アフリカへの依存を減らすために、他のカカオ豆産出国が注目されている。例えば、カカオ豆生産では世界第3位のインドネシア。国内での自給自足とフードセキュリティが重視され、その一環として、国内に全世界向けのカカオ豆加工拠点の設立も計画している。 第39位のマレーシア、第24位のフィリピン、第11位のパプアニューギニアも、インドネシア同様の観点から、カカオ豆生産増を目指す。特にマレーシアは「メイド・イン・マレーシア」ブランドのチョコレートを創り出すことが目標だ。 気候危機で収穫量が減る西アフリカをよそに、気候危機で天候が変わったからこそ、カカオ豆生産のチャンスが巡ってきた国もある。 2009年香港でカカオ豆を育成し始めた、ビーントゥバー・ブランド「チョコビアン・チョコレート」の創設者、アンドリュー・リュウ氏は、気候が変わった影響で台湾や中国本土で良質なカカオ豆を生産できる可能性が出てきたことを、香港発行の日刊英字新聞『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』に話している。