閉経までの不規則な月経は止めてしまってもいいの? 月経コントロール方法の選択肢を解説【我慢しないで快適に過ごす、閉経への道 ④】
「閉経は、月経が自然消滅的になくなるもの」なんていうのは幻想だ。月経が乱れ始め、そろそろ閉経かもしれないなと思ったら、月経が異常すぎて体も心も疲れ果ててしまう…そんな人も多いもの。婦人科では、月経を止めてくれるという話も聞くが、実際のところ、止めてしまっても問題ないのだろうか? 地元密着型の婦人科クリニックは、一人の女性の若い時代から生涯にわたってお付き合いすることも多いのが特徴。若いときのPMSや更年期症状まで、一人一人の悩みに寄り添う立場だからこそわかる事情を、二人の先生にお聞きした。
つらい月経不順をほっとかないで! いったん止めてみるのもいい方法です
まず、お話を聞いたのは、妊娠・出産はもちろん、思春期、更年期、老年期の女性に寄り添い、40年以上診療を続けている日本産婦人科学会専門医の松峯寿美さん。 「閉経前に、月経が不順になるのは普通にあることなのだけれど、周期も期間も量も予想がつかないくらいバラバラになると困りものですよね。 でも、それはれっきとした月経異常なので、イライラするくらいなら婦人科に行きましょう。今は月経をコントロールする薬がちゃんとありますから。 特に子宮筋腫があると、周期はバラバラだし経血量はあふれ返るほど多くなるし…。それを我慢していたらだめですよ」 「もう妊娠したいわけじゃないから、月経は毎月こなくてもいいわ。それより苦しめられてきた月経をなんとかしたい」という人なら、“月経を止めてみましょう”と提案するそう。 「月経がこないように、でも女性ホルモンはなくならないようにする薬があるんですよ。それはジエノゲスト(ディナゲスト)というとてもよい薬。黄体ホルモン(プロゲステロン)と同じ働きをする薬です。 ジエノゲストには、ピルで起きるような血栓症の副作用がないので、10代から50歳くらいまでの女性に適応します。 黄体ホルモンは体内では月経の後半に出ているホルモンで、この薬を飲むことによって子宮内膜は厚くならない。つまり、飲んでいる間は月経はこなくなるんです。 といっても自分のエストロゲンは少しだけ出ている状態なので、更年期症状が出たり、閉経させるわけではありません。 1日2回、飲み続けている限り月経はこない。だけど体調はいい。やめればすぐに月経はくる。なんて便利なんでしょう! 飲み忘れないようにしないとすぐきちゃいますけどね。 近年、毎月の月経そのものが、子宮や卵巣にダメージを与えることが解明されてきました。子宮をしばらくお休みさせてあげることが、とてもよいわけです」 《閉経までを快適に過ごすための薬はこんなに進化!》 「ジエノゲストで月経を止める話をすると『1回飲み始めたら、閉経するまで10年間も飲むんですか?』と。『そうよ』っていうと『それは無理~』という人もいるわね。 そしたらミレーナという、黄体ホルモンが入っている小さな器具もあります。子宮に入れておいて、ゆっくりゆっくり子宮内膜に作用して、黄体ホルモンを自動的に放出してくれる。ミレーナは5年以上入れたままでいいから、これがいいという人も少なくないんですよ。 地方の医療機関ではミレーナなんてすすめてもらえない?そういうときは東京にいらっしゃい。何度も来なくてもいいのだから。とにかく我慢はだめ。自分の体のことなんだから、自分の人生なのですからね。 『そういう長く飲む薬はいらない、でも月経を止めたい』という人には、偽閉経にする薬レルミナ。使用期間が6カ月までと決められていますけれど。 もう少し若い40歳そこそこの人で月経をコントロールしたい、避妊もしたいという人には、低用量ピル。ピルはエストロゲンと黄体ホルモンが両方入っている薬です」 ピルにも保険で処方できるものがいろいろあるという。 「おすすめはルナベル。これは低用量よりさらにエストロゲンの量が少ない超低用量ピル。 昔は高用量、次に中用量ピル、少し前は低用量ピル。それが今はルナベルのようなウルトラロードース(ULD)という超低用量ピルまであるの。 ウルトラロードースは飲み忘れると、すぐに出血してしまう。低用量までなら『夕べ飲むの忘れたから、今日お昼に飲んじゃおう』でも間に合うんだけど、超低用量だと間違いなく飲んでもらわないとダメなんです。間に合わないんですよ。 血栓症のリスクもあるので検査をしながらですね。生活習慣もチェックしながら、ウルトラロードースを飲むということに抵抗がなくなってきたら、ジエノゲストに変えていくとか。 一人一人に合わせた治療法をとります。『治療』なんて言わないほうがいいかしら。『月経コントロール』と言ったほうが前向きでいいわね」